健康診断の聴力検査とは?異常が出た時に疑われる病気とその後の行動

お勤めの方は、毎年健康診断を受けることが多いですね。その中でも年齢に関係なく受ける重要な検査の一つが「聴力検査」です。

この聴力検査について「正常値・異常値の基準は?」また「引っかかった場合に疑われる原因や病気は?」と思ったことはありませんか?

健康診断の聴力検査は、聴力低下や突発性難聴、先天性難聴、騒音性難聴、メニエール病などを早期に発見し、対策を講じるためにとても大切な検査です。

この記事では、聴力検査の具体的な流れやその重要性について詳しく解説し、「所見あり」となった場合に考えられる主な原因についてもご紹介します。

健康診断の聴力検査に引っかかったことがある方も、これから健康診断を受ける方も、この機会に聴力検査の基準や目的、年齢別の主な原因について詳しく知っておきましょう。

1 健康診断の聴力検査について

1-1 健康診断の聴力検査とは

会社員が受ける健康診断には、一般的に「雇い入れ時の健康診断」と「定期健康診断」の2種類があり、共通の11項目の検査が定められています。その中で、どの年齢でも受けなければならない項目のうちの一つが「聴力検査」です。

聴力検査を受ける機会は意外と少ないので、年に一度の健康診断は貴重な機会です。しっかりと検査を受けて、聴力の状態を確認してください。

1-2 「聴力検査」の全体の流れ:5 ステップ

健康診断の聴力検査は、基本的に以下の5ステップで行われます。

ステップ 1:防音室に入室

聴力検査専用の防音室に入って、椅子に座ります。
防音室で検査を行うことで、周りの音を遮断することができ、より正確に検査することができます。

ステップ 2:ヘッドフォンの装用

聴力検査専用のヘッドフォンを装着します。赤色が右耳用、青色が左耳用です。

ステップ 3:ボタンスイッチの受け取り

ボタンスイッチが渡されます。ヘッドフォンから音が聞こえたら、このボタンスイッチを使って、技師に知らせます。

ステップ 4:音を聞く

ステップ13が完了したら、防音室のドアを閉めます。防音室の外で、技師が「オージオメーター」という機会を操作すると、ヘッドフォンから音が聞こえてきます。
片耳ずつ順番に、さまざまな高さの音をさまざまな大きさで流します。

ステップ 5:音に反応

ヘッドフォンから音が聞こえたら、ボタンスイッチを押します。音が聞こえている間は、ボタンスイッチを押したままにします。
ボタンを押すと、測定を行う技師に知らせが届きます。

2 健康診断の聴力検査の目的と重要性

健康診断の聴力検査は「選別聴力検査」と呼ばれます。この検査の目的は、音を聞き取る能力を調べ、日常生活に支障がないかどうかを確認することです。この検査で聴力低下を早期に発見し、疑われる耳の病気や原因などを確認することできます。

特に、突発性難聴、先天性難聴、騒音性難聴 やメニエール病などの病気を早期に発見するために重要です。早めに見つかれば、場合によっては適切な対応や治療を行うことで、改善が期待できることもあります。

「耳の健康」を守るために、定期的に検査を行うことがとても重要です。

3 健康診断の聴力検査の基準範囲

健康診断の聴力検査では、一般的に低い音(1,000Hz)と高い音(4,000Hz)の2種類を、様々な大きさ(dB)で聞きます。
この2種類の音がどのくらいの小さい音で聞こえるかで、「正常」か「異常」かが判断されます。

健康診断の聴力検査の基準範囲
音の高さ 基準範囲
1,000 Hz(低い音) 30dB 以下
4,000 Hz(高い音) 40 dB 以下

出典:https://www.mhlw.go.jp/content/000840223.pdf

「両方の耳」とも「1,000 Hzの低い音が30dB以下で聞こえる」かつ「4,000Hzの高い音が40dB以下で聞こえる」のなら、「聴力が正常」だと判断されます。
もし4,000Hzの音が40dBよりも大きな音量でないと聞こえないのなら、「高周波域の聴力障害の可能性」があります。
1,000Hzの音が30dBよりも大きな音量でないと聞こえない場合は、「中程度の周波数域の聴力障害の可能性」があります。

尚、この聴力検査で聞く2種類の音は、それぞれ次のように普段の生活でよく聞く音と同じ高さ・大きさです。
健康診断の聴力検査が「日常生活に支障がないかを確認するためのもの」というのがよくわかりますね。

各音の具体的な例
標準範囲の音 具体的な例
1,000 Hz/30dB 小さな声での会話
4,000 Hz/40dB

高い音の警報音
(例えば、電子機器のアラーム音)

4 健康診断の「所見あり」とは聞こえに異常が示される状態のこと

聴力検査では、左右それぞれの耳で高低2種類の音を聞きます。つまり、4つの検査を行うことになります。この4つのうちどれか1つでも聞こえなければ、「所見あり」になります。

上記の検査結果は、「右耳は1000Hz4000Hz10dBで音が聞こえた、左耳は両方の高さとも5dBで音が聞こえた。4つ全てA判定で問題なし」という結果です。

5 年代別の聴力検査の所見:考えられる原因

健康診断で聴力検査の所見が出ると、ビックリしてしまいますよね。特に若い人にとっては「どうして自分が?」とショックでしょう。ですが、難聴の原因は様々です。

以下に、年代別に考えられる主な原因をご紹介します。

このように、どの年代でも聴力に影響を与える原因は多くあり、それぞれ対処法が違います。

耳垢塞栓は、耳あなに耳垢が詰まっているということ。耳鼻咽喉科で耳掃除をしてもらえば改善するでしょう。

持続的な騒音暴露というのは、例えば工場や工事現場など、大きな音がする環境に長時間滞在することで起こる難聴です。このような環境で働く人は、静かなオフィスで働く人よりも耳に負担がかかりやすく、「所見あり」となる可能性が高まるでしょう。

突発性難聴は、ある日突然聞こえ方が悪くなるもので、原因はよくわかっていません。すぐに対処が必要で、適切なタイミングで適切な対処すれば改善が期待できます。

加齢性難聴(老人性難聴とも)も、もちろん原因の一つです。聴力は30歳頃から自然に衰え始め、高音域から徐々に低下していきます。誰にでも起こることで、自分では気づきにくいので、家族や友人に指摘されて初めて自覚することもあります。

ここに上げたのはごく一部の例です。難聴の種類は様々で、原因を確定させるために他の科を受診する必要がある場合もあります。

6 聴力検査で「所見あり」が出たら早めに行うべきこと

もし健康診断の聴力検査の結果に「所見あり」が1つでもあったら、検査結果の用紙に掲載されている対処法に従って行動しましょう。一般的には「耳鼻咽喉科で再検査を受ける」ことが推奨されます。

耳鼻咽喉科では、健康診断の聴力検査よりもさらに詳細な検査が行われます。その検査結果をもとに、医師が難聴の原因を診断し、対処方法を決定します。

耳鼻咽喉科で行われる検査については、こちらの記事で詳しく解説しています。
聴力検査結果の見方がわかる!「標準純音聴力検査」を詳しく解説

7 聴力検査についてよくある4つの質問

健康診断の聴力検査と耳鼻咽喉科の検査の違いは何ですか?

健康診断の聴力検査は「選別聴力検査」と呼ばれます。もともとは、騒音作業現場で働いている方々の聴力障害を調べるための検査です。この調査では、騒音性難聴の初期症状として聞こえにくくなる4,000Hzの音が検査項目として設定されています。短時間で終了し、具体的な聴力レベルは出てきません。

一方、一般的に耳鼻咽喉科で行わる聴力検査は、「標準純音聴力検査」と言います。この調査には「気導聴力検査」と「骨導聴力検査」が含まれます。
「気導聴力検査」は、健康診断と同じく、ヘッドフォンから音を聞きますが、「骨導聴力検査」では、耳の後ろに音を伝える装置を使います。
検査は、125Hz(低い音)から8,000Hz(高い音)までの広い範囲の音を対象にして、それぞれの高さで聞こえる最小の音を調べます。

耳鼻咽喉科での聴力検査では、聴力の具体的な状態や問題の原因をより詳しく判明することが可能です。
標準純音聴力検査についてはこちら

健康診断の聴力検査は信頼できるものですか?

はい、健康診断の聴力検査には信頼性があります。ただし、耳鼻咽喉科で一般的に行わる聴力検査と比べると、簡易的な検査になります。

例えば、加齢による難聴は高音域(8000Hz)から始まります。しかし、健康診断では4000Hzの高さまでしか検査しないため、加齢性難聴の初期段階が見逃されることがあります。
正確な聴力検査を受けたい場合は、耳鼻咽喉科で聴力検査を受けることをお勧めします。

補聴器をつけたまま健康診断の聴力検査できますか?

いいえ、通常は補聴器を外して聴力検査を行います。
補聴器を装用した状態でヘッドフォンをつけると、実際の聴力を確認することができなくなります。
しかし、健康診断の聴力検査と違って、病院や補聴器販売店では補聴器をつけたまま検査を行う場合もあります。検査前に、補聴器をつけたままの検査が可能かどうか、確認してみてください。

健康診断の聴力検査の結果は一時的なものでしょうか?

聴力検査の結果が一時的なものである可能性もあります。検査当日の体調やその他の要因も影響すると考えられます。聴力低下の原因によっては、聴力の回復が期待できることもあります。
ですが、「所見あり」の結果が出たのなら、耳鼻咽喉科でさらに詳しい検査を受けることをお勧めします。また、聴力検査で異常が指摘されなくても、聞こえに違和感や不安を感じたら、早めに耳鼻咽喉科に行きましょう。

まとめ

この記事では、聴力検査の基本的な流れや、結果の確認方法、「所見あり」となった場合に考えられる原因について詳しく解説しました。

この検査でわかる両耳の正常な聴力の基準は「1,000 Hzの低い音を30dB以下の音量で聞くことができる」と「4,000 Hzの高い音を40dB以下の音量で聞くことができる」です。

「所見あり」の結果が出た場合、年齢別に考えられる主な原因を以下のように紹介しました:

年齢や生活環境が聴力の変化に関係しています。もし健康診断の聴力検査の結果が「所見あり」となった場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。