特長、価格から選ぶポイントや注意点まで。デジタル補聴器を徹底解説

「そろそろ補聴器を使った方がいいのかな。一度、試してみようかな…」そう考え始めた方にこそ、まず知っていただきたいのが、最新の「デジタル補聴器」のこと。
デジタルカメラ、デジタル時計、デジタルブック、デジタル放送など…、世の中にはデジタル製品があふれていますが、現在、市販されている補聴器もほとんどが「デジタル補聴器」です。デジタル補聴器が登場して、すでに20年以上、それまでのアナログからデジタルへと変化することで、補聴器は飛躍的な進化を遂げ、多彩な機能によってたくさんのことができるようになりました。

この記事では、デジタル補聴器の特長やメリットはもちろん、気になる価格や種類など、補聴器を選ぶ時に重視すべきポイントを丁寧にアドバイス。さらに、購入した後の注意点や長く快適に使い続けるための秘訣なども紹介しています。

まず、デジタル補聴器のことを正しく理解すること。それが最適な補聴器を選ぶための近道です。

目次

1 デジタル補聴器とは?アナログとの違いは?

1990年代に入ってデジタル補聴器が登場したことで、補聴器は大きく進化を遂げました。 デジタル補聴器には、小さなコンピューター(マイクロプロセッサ)が内蔵されており、アナログ補聴器よりも、はるかにきめ細かな分析・処理が行えるので、一人ひとりの「聞こえ」により適した音に調整できるようになりました。

デジタル補聴器の登場によって、補聴器を取り巻く環境は大きく変わりました。現在市場に流通している9割以上をデジタル補聴器が占めるようになっています。

1-1 デジタル補聴器の特長

デジタル補聴器には、小さなコンピューター(マイクロプロセッサ)が内蔵されており、デジタル補聴器に入った音は、「アナログ/デジタル変換器」によって0101・・・というデジタル信号に変換されます。デジタル信号に変換された音は、マイクロプロセッサで分析され、非常に複雑な信号処理が施されます。デジタル補聴器の最大の特長は「マルチチャンネル化した信号処理」にあります。

私たちの耳は同時にたくさんの音を聞いています。同時に聞こえる音をいくつかに分割(マルチチャンネル化)し、特定の種類や高さの音だけの大きさを調節できる(信号処理ができる)ようにすることが「マルチチャンネル化した信号処理」です。
この処理により、最新のデジタル補聴器では人間の音声以外の音(周囲の雑音や騒音)は増幅せずに、聞き取りたい音声を優先して大きくするなどのさまざまな工夫ができるようになりました。

1-2 デジタル補聴器/アナログ補聴器 比較表

デジタル補聴器とアナログ補聴器には、信号処理方式の違い以外にも異なる点がたくさんあります。主要な項目で比較してみました。

比較項目 デジタル補聴器 アナログ補聴器
音声信号の処理方式 音声信号をデジタル信号に変換し、コンピューターのマイクロプロセッサで信号を処理する 音をそのまま電子信号として処理し、増幅する
使う人に合わせた調整 ユーザー一人ひとりの聴力や聞こえの状態に合わせてきめ細かく調整することができる 音量の調節程度なら可能。ユーザー一人ひとりに合わせた調整はできない
言葉の聞こえ方 会話の妨げになる雑音だけを抑えて、言葉だけを聞き取りやすくすることができる 基本的には入ってくる音は全て増幅するので、言葉だけでなく周囲の騒音も大きく聞こえてしまう
価格 性能や機能によって差があるが、片耳10万円程度~50万円程度 2~5万円の製品が多い

このようにデジタル補聴器とアナログ補聴器には、価格をはじめとして大きな違いがあるので、こうした違いを理解して補聴器を選ぶことが大切です。

2 デジタル補聴器ができる4つのこと

デジタル補聴器は、従来のアナログ補聴器ではできなかったことを可能にしました。そして、デジタル補聴器によって、補聴器ユーザーはより豊かな毎日を過ごすことができるようになりました。

ここでは、具体的に補聴器がデジタル化されてできるようになったことをいくつか紹介します。

2-1  使う人の聴力や聞こえの状態に合わせてきめ細かく調整できる

使う人の聴力や聞こえの状態に合わせてきめ細かくフィッティング・調整をすることができます。デジタル補聴器は、使う人の状態に合わせて調整することで初めて性能を最大限に発揮することが可能になります。
購入する際はもちろん、購入後も使用しながら繰り返し調整を重ねることで、より快適な聞こえを作り上げていきます。

デジタル補聴器は、入ってきた音をいくつかに分割(マルチチャンネル化)し、分割したチャンネルごとにきめ細かく分析・処理できます。ですので、使う人の聴力や聞こえの状態を細かく分析して、それに合わせて補聴器の音を調整することができるのです。

調整はコンピューターを使用し、「どんな音が聞き取れていないのか」「どんなシーンで不自由を感じているのか」といった情報を把握した上で、「どの高さの音をどの程度増幅させると快適に聞こえるのか」、「どの高さの音は、増幅させすぎるとうるさく感じてしまうのか」という点などを考慮しながら、専用のソフトウェアで行われます。
補聴器の調整のデータは、コンピューターに記憶されるので、調整を繰り返していくことで、より使用する人に合った快適な聞こえを提供できるようになります。

デジタル補聴器は使う人に合わせて調整できる
使う人の聴力に合わせてきめ細かく調整できる

2-2 騒音を抑えて言葉だけを聞きやすくしてくれる

デジタル補聴器を代表する機能が、「騒音制御機能」です。
デジタル補聴器は、入って来た音をきめ細かく分析することで、音声と周囲の騒音を識別し、騒音を抑えて会話を聞き取りやすくするので、騒音の中でも会話が聞き取りやすくなります。

騒音を制御する機能は、「定常雑音(エアコンの音など、音の大きさが一定の音)を低減する機能」「大きさが変化する雑音(街の雑踏、機械の作動音など)を低減する機能」「指向性(会話など特定の方向からの音を聞きやすくする)機能」「不快な衝撃音(ドアを閉める音、食器が当たる音など)を低減する機能」などにさらに細かく分けることができます。
これらさまざまな機能の働きで、騒がしい場所でも会話がはっきり聞き取れるようになるのです。

周りの騒音を抑えて会話をききやすくしてくれる
デジタル補聴器は周りの騒音を抑えて会話を聞きやすくしてくれる

2-3 サイズを小さくすることができる

従来のアナログ補聴器は、ポケット型やサイズの大きな耳かけ型が主流で、「できるだけ補聴器をつけていることを知られたくない」というユーザーの希望を叶えることは難しいと言わざるを得ませんでした。

デジタル補聴器の信号処理は、極小サイズのICチップで行われるため、補聴器を劇的に小さくできるようになりました。さらに、音を集めるマイクや音を出すレシーバー、動力源である電池の小型化によって、耳の穴にすっぽり収まってつけていることがほとんどわからない超小型の耳あな型補聴器や、髪の毛で簡単に隠れてしまうような耳かけ型補聴器が登場してきました。

耳の穴に収まってほとんど目立たない耳あな型や、髪の毛で隠れてしまう耳かけ型
耳の穴に収まってほとんど目立たない耳あな型や、髪の毛で隠れてしまう耳かけ型も選べる

2-4 さらにこんなこともできる

デジタル補聴器は絶えず進化を続けています。すでに紹介した機能以外にも、ユーザーの生活を豊かにする新しい機能が次々に登場しています。

  • AI機能:周囲の環境に合わせて最適な音を届けるだけでなく、その上で「使う人の音の好み」を学習して音に反映させることができる。
  • ストリーミング機能:補聴器とスマホがつながり、補聴器のマイクを通さないクリアな音声を補聴器に直接届けることで、快適な通話を楽しめる。スマートフォンで再生した音楽や動画の音声を補聴器で直接聞くことができる。
  • スマートフォンをリモコンに:スマートフォンのアプリを使って、補聴器の音量や音質を調整したり、聞こえ方を簡単に切り替えたりすることができる
ワイヤレスイヤホンのようにスマートフォンの音楽や動画を楽しめる
ワイヤレスイヤホンのようにスマートフォンの音楽や動画を楽しめる

3 デジタル補聴器の活躍シーン

これまで紹介したように、デジタル補聴器には多彩な機能が搭載され、アナログ補聴器ではできなかった多くのことができるようになりました。
それでは、デジタル補聴器は、実際の生活の中でどんなメリットをもたらしてくれるのでしょうか。

3-1 家族や友人とのおしゃべりも楽しく

聴力が低下すると、徐々に聞き逃しや聞き間違いによる聞き返しなどが多くなってきます。そういうことが重なってくると、ついつい話すことが億劫になるため、家族との会話や友人と会う機会もおのずと減ってきてしまいます。

デジタル補聴器は、比較的静かな家の中はもちろん、レストランや乗り物の中など周囲が騒がしい場所でも言葉をクリアに届けることができるのが最大のメリットです。
話し相手の言っていることを楽にはっきりと聞き取ることができるので、「しっかり聞き取ることに必死で話の内容どころじゃなかった…」「聞こうとすることで疲れてしまって、久しぶりの集まりも楽しめなかった…」という思いをすることはありません。

デジタル補聴器は、人と話す楽しさを取り戻してくれます。そして、家族や友人とのコミュニケーションを円滑にし、毎日の生活をより豊かなものにしてくれます。

友人とのおしゃべりがもっと楽しくなる
友人とのおしゃべりがもっと楽しくなる

 

3-2 旅行や音楽、映画鑑賞など趣味をもっと楽しく

「聴力が低下する前は旅行が趣味でいろいろな場所に出掛けていたのに…」「映画やテレビを見ていても台詞が聞き取りにくくて楽しくない…」「コンサートに行っても以前のように臨場感が感じられない…」。
聞こえにくいことが原因で、自分の趣味や好きだったことを諦めてしまっている人も多いようです。

デジタル補聴器によって聞きやすくなるのは、会話だけではありません。テレビドラマや映画、お芝居のテンポの速い台詞も聞き逃すことが少なくなるので、ストーリーの展開に集中できるようになります。
また、風や波の音、小鳥の鳴き声など、自然の中にあふれているたくさんの音が聞き取れるようになり、旅先での楽しみがより大きくなります。もちろん、その土地での人との出会いも、より豊かなものになります。

補聴器の主な目的は、会話をはっきり聞き取ることにあります。そのため、音楽を聞くことに関しては少し事情が異なります。
会話と音楽は、音の特長が大きく異なるため、音楽を臨場感のあるサウンドで再現することはなかなか難しいのです。ですが、最新の補聴器の中には、音楽を聞くことに特化したプログラムを設定できる器種があります。

音楽鑑賞に特化したプログラムでは、低域から高域にわたるオーケストラのさまざまな楽器の音色をできるだけ繊細に再現できるようになります。また、ヴォーカルのある曲は伴奏のダイナミックさを犠牲にすることなく、歌詞を聞き取りやすくしてくれます。
スマートフォンの音楽を聞く場合は、周囲からの音に邪魔されないよう、スマートフォンから音のデータを直接補聴器に届ける機能を搭載した器種もあり、大好きな音楽だけに集中することができます。

音楽も臨場感のある音で楽しめる
音楽も臨場感のある音で楽しめる

3-3 会議や打ち合わせ、商談などビジネスで

仕事を進めて行く上で、社内や取引先との円滑なコミュニケーションは必要不可欠です。会議や打合せ、商談などの重要なビジネスシーンでは、聞き間違いや聞き逃しは許されません。また、たびたび聞き返していては、スムーズな会議の進行は難しくなってしまいます。

特に多彩な機能を備えた上位クラスの補聴器は、静かな場所はもちろん、騒がしい場所や大人数がいる場所でも言葉をよりはっきりと聞き取ることができます。大切な会議や重要な商談など、相手の話を聞き逃すことができないシーンでは、補聴器が効果を発揮してくれます。

補聴器といえば、肌色で・大きくて・目立つ、というイメージをいまだに抱いている人もいるかもしれませんが、最近では、耳あなにすっぽり隠れて目立たない超小型の耳あな型補聴器や、ヘアスタイルによってはつけていることがほとんどわからないRICタイプの補聴器など、多彩なモデルが登場しています。
補聴器をつけていることを相手に気づかれずに使用できるので、補聴器に抵抗がある方にもおすすめです。

スムーズなコミュニケーションが求められるビジネスシーンでも補聴器が活躍
スムーズなコミュニケーションが求められるビジネスシーンでも補聴器が活躍

3-4 日常のさまざまな場面で

これまで紹介したシーン以外でも、日常生活の中では、聞き逃しや聞き間違いを避けたい様々な場面があります。病院や役所などの公共機関がその代表的なものです。
補聴器を装用すれば、病院での呼び出しの声を聞き逃したり、先生からの説明を聞き間違えたりする心配が少なくなります。また、役所の窓口などでのやりとりもスムーズに行うことができます。

4 デジタル補聴器の種類いろいろ

デジタル補聴器になってできるようになったことや日常生活においてのメリットについて紹介してきました。ひとことでデジタル補聴器と言っても、実はいろいろな種類に分けることができます。

ここでは、デジタル補聴器のさまざまな種類について紹介します。それぞれの特長を知り、自分の聴力や好みに合った一台を見つけましょう。

4-1 対応する聴力の違いによる種類いろいろ

聴力低下の度合いによって、対応できる補聴器も変わってきます。

難聴の程度が比較的軽い場合は、耳の穴にすっぽり収まる超小型の耳あな型やコンパクトサイズの耳かけ型を使用することができます。
一方で、難聴の程度が重くなると、より高出力な補聴器でないと対応することが難しくなります。高出力の補聴器は耳かけ型が多くなり、サイズが大きめになります。

4-2 形状の違いによる種類いろいろ

一般的に「補聴器のタイプ」という場合は、形状の違いを指す場合が多いようです。

デジタル補聴器には大きく分けて、耳の穴に入れて使用する「耳あな型」と、耳の後ろにかけて使用する「耳かけ型」があります。
さらに耳かけ型には、音を出す部分を耳あなに収めることで本体のサイズをコンパクトにした「RICタイプ」があります。

それぞれのタイプの特徴は以下の通りです。

メリット/注意点 耳あな型 耳かけ型(RICタイプ)

メリット

・耳の穴に収まるので目立ちにくい
・マスクや眼鏡をする際にも気にならない
・オーダーメイドタイプは耳の穴に合わせてつくるので、耳にぴったりフィットして外れにくい

・音量調整や聞こえ方の切替ができるタイプもあり、取り扱いがしやすい
・長い電池寿命や、重度対応の高出力タイプなど、選択肢が多い
・デザインやカラーのバリエーションが豊富

注意点 ・サイズや使用電池も小さいので、取り扱いがしにくいと感じることも
・使用電池が小さいので、電池寿命が短くなる
・耳をふさぐので、こもり感を感じることがある
・重度難聴の場合は適応できないケースがある

・重度難聴に対応するタイプはどうしてもサイズが大きくなりがち
・眼鏡やマスクと一緒に装用する際はつけ外しに手間がかかることも

デジタル補聴器にはさまざまな形があります
デジタル補聴器にはさまざまな形があります

4-3 電源の違いによる種類いろいろ

通常補聴器は、空気中の酸素を使って発電する「空気電池」という種類のボタン電池によって作動します。

使用する空気電池の種類は補聴器のモデルによって異なり、使用する電池の容量が大きいものほど電池寿命が長くなります。
最近ユーザーが増えてきているのが、「充電式」の補聴器です。スマートフォンなどと同様リチウムイオン電池を内蔵しており、専用の充電器に置くことで本体が充電されます。
それぞれのメリットと注意点をまとめました。

メリット/注意点 空気電池式 充電式
メリット ・補聴器の種類が豊富
・災害時など、電源を探すのが難しい場所や状況でも使用できる
・電池購入や交換の手間が要らない
・夜のうちに充電しておけば、電池切れを気にせず翌日たっぷり使える
注意点 ・小さな電池を交換する作業が必要
・電池の寿命を気にしながら使う必要がある
・宿泊を伴う旅行の場合は、充電器を持っていく必要がある
・災害時など、電源の確保が難しい場合は使用できない恐れも

5 デジタル補聴器の価格について

基本的な性能の向上とさまざまな機能を搭載することで大きな進化を遂げたデジタル補聴器ですが、その結果、アナログ補聴器に比べて高価になりました。

ここでは、一般的なデジタル補聴器の価格や、デジタル補聴器が高価になってしまう理由、価格差の要因などについて説明します。

5-1 一般的なデジタル補聴器の価格

現在市場に流通しているデジタル補聴器の価格帯は、1台10万円以下のものから50万円を超えるものまでさまざまです。

補聴器の平均購入額は1台15万円(JapanTrak2022)とされていますが、これはあくまでも平均値です。補聴器専門スタッフから購入した方の約70%が、10万~30万円の価格帯の補聴器を購入しているというのが現状のようです。
一方でアナログ補聴器の価格帯は2~5万円が一般的で、やはり、価格面ではデジタル補聴器は高額だということができます。

5-2 デジタル補聴器がアナログ補聴器に比べて高価な理由

デジタル補聴器の価格は大きく分けると、[補聴器本体の価格]と[フィッティングや調整の技術料]とで構成されています。

デジタル補聴器は、本体だけを買えばすぐによく聞こえるようになる訳ではありません。デジタル補聴器は、使う人の聴力や聞こえの状態に合わせて、しっかりとした調整を行うことを前提としているため、専門家によるサポートのための技術料が含まれることになります。

技術料とは別に、デジタル補聴器の本体が高額になってしまう理由は何でしょうか。
デジタル補聴器には、騒音を抑えながら言葉を聞き取りやすくする機能や、使う人に合わせて柔軟に調整できるといった基本的な機能以外にも、多彩な機能が搭載されています。
また、補聴器は体の機能の一部を補うための精密な医療機器なので、厳格に管理された環境の中で開発・製造されます。

補聴器のあの小さな本体の中には、最新鋭の高性能コンピューターが組み込まれている、と言うこともできます。中でも一番大切な補聴器の心臓部であるマイクロチップの開発には、莫大な費用と長い年月、多くの人手が必要になります。
一説によると、高機能補聴器のマイクロチップを独自に開発するためには、数億円から数百億円程度の費用がかかるとも言われています。

このように、デジタル補聴器は、メーカーが永年蓄積した知識や経験に基づく研究と開発の過程を経て生み出されます。そのため、店頭に並ぶ段階ではどうしても高価にならざるを得ないようです。

補聴器の価格は製品と調整料で構成されている
補聴器の価格は製品と調整料で構成されている

5-3 価格の違いは基本性能と搭載機能の違い

補聴器専門スタッフから購入した方の約70%が10万~30万円の価格帯、というデータを紹介しましたが、このようにデジタル補聴器の価格にはかなりの幅があります。

この価格差の理由について疑問に思っている方も多いと思いますが、ひとことで言うと、補聴器の価格差は、補聴器の基本的な性能と搭載されている機能の違いによるということができます。

価格が高い補聴器は、心臓部であるマイクロチップの能力が優れており、高度な音声処理が可能になります。例えばパソコンの価格が搭載しているCPUの処理速度の違いや、メモリの容量の違いなどによって変わってくるように、補聴器もその心臓部であるマイクロチップの性能によって大きく価格が変わってきます。

一般的には、高価な補聴器ほど騒がしい場所などより厳しい環境でも快適な聞こえを届けることができます。
加えて、最先端の機能が搭載されている補聴器ほど高価になってきます。例えば、周囲の環境の変化により柔軟に対応する機能や、使う人の好みの音をその場で反映できたり、音の好みを学習して使えば使うほど聞きやすくしてくれたりするAI機能などです。

その他には、一般的に耳あな型補聴器は一人ひとりの耳の形状に合わせて、オーダーメイドで製造されますので、外殻部分を作成する手間がかかる分、耳かけ形に比べ多少高価になることもあります。

5-4 サブスクなど新しいサービスも登場

最先端のデジタル補聴器は、価格の安いもので約10万円、高いものでは両耳で100万円を超えるものまであります。しかし、この価格帯の補聴器を気軽に購入できる人はそれほど多くはありません。

聴力の低下を自覚している人の割合に比べて、補聴器を使っている人が少ない日本の現状、その主な理由として、補聴器の価格の問題が挙げられます。「補聴器を試してはみたいけど、効果があるかどうかわからないのに、それだけの出費はできない」と逡巡している人が多いことが推測されます。
価格的に安価な集音器等を購入する人が多いのも、「補聴器は高い」というイメージが定着していることの現れかもしれません。

しかし、そうした現状を踏まえて、従来とは異なる新しいサービスも登場しています。すぐに補聴器を購入するのではなく、月々の定額料金で補聴器を使い続けることのできるサブスクリプションサービスは、その代表的なものです。使用する製品よって月額料金の異なるいくつかのコースを選択することが可能です。一例(耳より定額プラン)を挙げると、一括で購入すると20万円程度の補聴器を、月々3,600円の定額で使用することができます。

月額料金には調整やメンテナンスのコストも含まれているので、追加費用のことを気にする必要がありません。また、一定期間使用を継続した上で効果を感じない場合や、さらに高性能な器種や異なるモデルに変更したい時には、途中解約やコースの変更も可能です。

こうした「新しい補聴器との付き合い方」の登場によって、補聴器装用のハードルを下がり、補聴器がより身近な存在になることが期待されています。

出典:【耳より定額プラン】 補聴器のサブスク、月額3,600円から …

6 デジタル補聴器はどこで買うのがおすすめ?

ここまで、デジタル補聴器のことについていろいろ説明してきましたが、実際に購入する場合には、どんなお店で買うのがいいのでしょうか。

「デジタル補聴器の価格」のところでも説明しましたが、デジタル補聴器は購入時はもちろん、買った後も使用しながらきめ細かな調整をすることで、本当に自分にぴったり合ったものになります。補聴器を購入する際は、そのことを念頭に置いてお店を選ぶようにしましょう。

6-1 自宅や職場の近くなど通いやすいお店

デジタル補聴器は買って終わりという製品ではありません。
使う人の聴力や生活の環境に合わせて、専門家がきめ細かく調整を行うことで、その性能を最大限発揮することができます。

購入する際にしっかり調整することは不可欠ですが、実際に日常生活で使用していて出てくるさまざまな希望を踏まえて、さらに細かい調整を重ねていくことで、より快適に使いこなせるようになります。また、電池などの消耗品の購入や定期的なメンテナンスなど、調整以外にも購入後にお店に行く機会は頻繁にあります。

そういう意味でも、お店を選ぶ上で大切なのは、まず、「通いやすいお店」であることです。不具合などが発生した場合にも、お店が近くにあれば安心です。また、お店の定休日や営業時間が自分の生活パターンに合っているかどうかも大切なポイントです。

購入した後もお店に行く機会は頻繁にあるので、通いやすいかどうかは重要
購入した後もお店に行く機会は頻繁にあるので、通いやすいかどうかは重要

6-2 設備や知識・技術がしっかりしているお店

当たり前の話ですが、最新のデジタル補聴器はさまざまな機能や技術が搭載された精密機器です。
製品の性能を最大限に引き出すためには、販売員の高度な専門知識や調整のための経験や技術が求められます。また、防音室や検査機器など専用の設備も必要になります。

同じ製品であっても、どのお店で購入するか、どの販売員に調整してもらうかによって、満足度が変わってしまうこともあります。いくら高額な補聴器であっても、その性能を引き出すことのできる設備や技術が無ければ意味がありません。
現在、そうした設備や技術などを備えているお店かどうか、持っている販売員かどうかを判断する一つの基準があります。認定補聴器専門店、認定補聴器技能者がそれにあたります。

「認定補聴器専門店」とは、「認定補聴器技能者」が在籍し、補聴器の調整・選定に必要な種々の測定機器や設備について公益財団法人テクノエイド協会の認定審査基準をクリアしたお店だけに与えられる資格です。 5年ごとに認定時と同様の厳正な更新審査を受けることが義務付けられています。
認定補聴器技能者とは、補聴器の販売や調整などを行う際に、一定の知識や技能を有していることを認定された資格です。補聴器の取り扱いに特化した資格で、補聴器の専門家であることを意味します。

認定補聴器技能者と認定補聴器専門店
認定補聴器技能者と認定補聴器専門店

7 買う前に知っておきたいポイント

それでは、お店に行って補聴器を購入する際には、どんなことに注意すればいいのでしょうか。

ここでは、実際に購入しようとする際に気をつけた方がいいこと、知っておくといいことについて説明します。
特に、補聴器は初めてという人にとっては、わからないことばかりのはず。最低限以下のポイントを意識してお店に行くといいでしょう。

7-1 お店の人になんでも相談すること

補聴器店で補聴器を購入するまでの流れは、およそ下図のようになっています。

お店で最初にすることは、「カウンセリング」です。簡単に言うと、お店の人に自分の現在の状況を知らせて、補聴器をつけてどんな生活を送りたいかというゴールを共有することです。

自分の普段の生活の状況(仕事をしているかどうか、家族構成は、どんな趣味があるのか、外出する機会が多いのか、比較的家にいることが多いのかなど)や、生活の中でどんな場面(移動するバスの中、騒がしい街中、会議など)で聞きにくさを感じているのか、どんな音(ささやき声、女性や子供の声、ドラマの台詞など)が聞きにくいのか、補聴器をつけてどんな風になりたいか、など、どんなことでもいいので、お店の人に相談するようにしましょう。

このカウンセリングを通して、補聴器についての疑問や不安を解決、解消すること、しっかりお店の人とコミュニケーションを取り信頼関係を築くことが非常に重要です。

補聴器を購入するまでにはいくつかのステップがあります
補聴器を購入するまでにはいくつかのステップがあります

7-2 補聴器という製品をよく理解すること

補聴器をつけることで、若い頃と同じようなクリアな聞こえを取り戻せると期待する人も多いかもしれません。しかし、特に加齢による聴力低下の場合、残念ながら一度低下してしまった聴力は、補聴器を使っても完全に元に戻すことはできません

ですが、自分の聴力に合わせて適切に調整された補聴器のサポートを受けることで、家族と同じ音量でテレビを楽しめるようになったり、同窓会などで友人とおしゃべりを楽しめるようになったりと、日常生活の中で不便を感じていた場面でも、快適に聞こえるようになることが期待できます。

また、次の章でも説明していますが、補聴器は購入してすぐに快適に使いこなせる訳ではありません。まず、補聴器をつけて聞こえてくる音に慣れること、そして、自分の聞こえの状態や希望に合わせて調整を行うことが必要不可欠であることを認識しておいてください。

7-3 納得できるまで試してみること

実際にお店で補聴器を試聴する際には、静かなところだけではなく、騒がしい場所などいろいろな環境でどう聞こえるかを試してみるようにしましょう。

補聴器は毎日の生活の中で使用するものです。補聴器を使うのは、静かな場所ばかりではありませんし、うるさい場所ばかりでもありません。そうしたさまざまな場所で、補聴器は最適な聞こえを提供できなければなりません。

試聴の段階でも、補聴器の聞こえ方についてお店の人と相談をしながら細かい調整を行い、いろいろな環境で快適に聞こえるようにしていきます。そのためには、感じたことをお店の人に遠慮せずに伝えるようにしましょう。

この試聴の段階で、補聴器の「貸し出しサービス」を行っているお店もあります。これは、補聴器を一定期間(お店によって異なります)貸し出してもらい、実際の生活の中で補聴器の使用を体験できるというサービスです。持ち帰って補聴器を試すことができるので、自分の毎日の生活パターンの中で補聴器の効果が実感できます。
朝、家族と一緒に朝食を食べる時の会話の聞こえ方がどう違うのか、補聴器をつけると会議の時の言葉の聞き取りやすさが変わってくるのかどうか、補聴器をつけない時とつけた時でテレビの音量がどのくらい違うのか、といったことをじっくりと確かめることができます。

お店での試聴と合わせて利用すれば、補聴器を使うと日常生活がどう変わるのかということをイメージしやすくなります。お店にこのサービスがある場合は、利用してみるのもいいかもしれません。

8 購入してからが肝心

これまでに何度も触れたように、補聴器は店頭に置いてあるものを買って終わりという製品ではありません。

使う人の聴力はもちろん、生活環境に合わせて細かい調整をすることで、快適な聞こえを提供できるようになります。
補聴器は、使う人とお店の人が協力して買った後も育て続けていくものということもできます。そのために知っておきたいことを紹介します。

8-1 効果を実感できるまでにはある程度の時間がかかる

聞こえを改善するために使用するので、補聴器に即効性を期待するのも無理はありません。しかし、補聴器を使えばすぐに聞きやすくなる訳ではないことも知っておく必要があります。

聴力が低下した状態が長く続くと、人間の脳はそれに慣れてしまいます。静かであることが当たり前と感じている状態の脳に、補聴器を通じて今まで聞こえていなかった音が入ってくると、うるさく感じてしまったり、補聴器をつけていることがつらくなってしまったりすることがあります。

補聴器をつけて多くの音が入ってくる状態に適応できるようになるまでに、ある程度の時間がかかるということを念頭に入れておいてください。
すぐに効果を実感できないからといって、あきらめてはいけません。個人差はありますが、一般的に補聴器に慣れるには3カ月程度が必要と言われています。

補聴器をつけて、聞こえにく状態に慣れてしまった脳をリハビリする、トレーニングすると考えてみてください。すぐには成果は出なくても、続けていくことで、徐々に補聴器を通して聞こえてくる音に慣れてくると、自分の聞こえ方が改善していることを感じることができるはずです。

すぐに効果が出なくても、あきらめずに続けていくことが大切
すぐに効果が出なくても、あきらめずに続けていくことが大切

8-2 定期的に聞こえ方をチェックすることが大切

繰り返しになりますが、重要なのは、日常生活で補聴器を使いながら微調整を重ねて、さらに自分に合った聞こえを提供する補聴器をつくり上げていくことです。

購入する時には気にならなかったことが、使っていくうちに気になってくるのは珍しいことではありません。また、時間が経過するうちに、購入時から聴力が変化することもあります。
そうしたケースに対応するためにも、2~3ヶ月に一度は補聴器を購入したお店に定期的に足を運んで、聞こえの状態のチェックと補聴器の微調整を行うことがおすすめです。

8-3 プロのメンテナンスが快適に使い続けるコツ

補聴器は毎日体に触れて使用するものなので、考えている以上に汗や汚れの影響を受けやすくなります。汗による水分や汚れ、ホコリなどをそのまま放置しておくと、故障につながる恐れがあります。また、既製の耳せんや耳あかガードなどは消耗品なので、定期的に交換する必要があります。

補聴器を快適な状態で長持ちさせるためには、就寝前の拭き掃除や乾燥ケースへの保管など、自分でできる毎日のお手入れがとても大切です。
それに加えて、自分ではできない、補聴器本体の性能のチェックや専門機器を使ったクリーニングをお店に行って定期的に行うことも忘れないようにしてください。先に説明した補聴器の微調整と合わせて行うことがおすすめです。

定期的にお店でプロのメンテナンスを受けましょう
定期的にお店でプロのメンテナンスを受けましょう

8-4 耐用年数と買い替え

厚生労働省が定めた障害者総合支援法に基づくと、補聴器の耐用年数は一般的に5年とされています。ただし、使い方、お手入れの状況などによって、この寿命は大きく変わってきます。

5年以上同じ補聴器を使いつづけている人もたくさんいますが、購入後長い期間がたっている場合は、その商品が販売中止・製造中止になっていることもあります。一般的に補聴器の販売が終了して5年を経過すると、メーカーが修理部品を持たなくなり、修理できない場合があるので注意が必要です。

補聴器の買替時期については、ユーザーによってさまざまですが、最近では、一般的な耐用年数である5年を経過せずに買い替える方も増えてきています。電池式から充電式へ、さらに目立たずコンパクトに、といった使い勝手や外観で買い替える方もいますし、機能面でもデジタル補聴器は進化を続けているので、より良い聞こえを求めて新製品を試してみたいというユーザーが増えていることがうかがえます。

 

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