夏の汗や湿気は補聴器の敵!?プロが教える使い方のコツ

「最近、補聴器の調子が悪い気がする…」

「汗をかくとノイズが入る」

「湿気のせいか音が小さくなった」

そんなお悩みありませんか?

夏は補聴器にとって過酷な季節です。高温多湿な環境は、精密な電子機器である補聴器にさまざまなダメージを与えます。

でも大丈夫!正しい知識と対策があれば、夏でも快適に補聴器を使い続けることができます。

この記事では、補聴器のプロが、夏に起こりがちな補聴器トラブルの原因から具体的な対策方法ちょっとしたコツまで、実践的で役立つ情報をお届けします。

1 補聴器が夏に受けるダメージとは?

1-1  汗・湿気・皮脂の影響

夏の補聴器トラブルの最大の原因は、汗と湿気です。

人間の汗には塩分が含まれており、この塩分が補聴器の内部回路に侵入すると、金属部品の腐食を引き起こします。

湿気によって音口(音の出口)が詰まると、音が小さくなったり、こもったような音になることもあります。

また、夏は皮脂の分泌が活発になるため、皮脂や汚れが補聴器の音口や通気口を詰まらせる原因となります。

1-2  高温による部品へのダメージ

補聴器の推奨保管温度は、一般的に10℃~40℃程度(※)とされています。
そのため、夏の高温は補聴器の内部回路やバッテリーに悪影響を及ぼす可能性があります。

電子部品は一般的に高温に弱く、長時間高温にさらされると劣化が進み、故障の原因となります。

特に、直射日光の当たる場所や夏場の車内は50℃以上に達する場合もあるため、放置するのは避けましょう。

※メーカーや器種によって異なる場合がありますので、お使いの補聴器の取り扱い説明書を確認してください。

1-3  雨や海・プールでのリスク

夏のレジャーシーズンには、水に関連する補聴器のリスクが増加します。

最近の補聴器は高い防水性能を持つタイプも多く登場しているため、雨に濡れた程度であれば問題ありませんが、それでも完全防水ではありませんのでご注意ください。

特に海水やプールの水には注意が必要です。海水など真水以外に含まれる成分が補聴器に影響を及ぼす恐れがあります。

海やプール、温泉などで補聴器を濡らしてしまった場合は、すぐに補聴器販売店に相談しましょう。

関連記事:補聴器をつけて海に行っても大丈夫!海辺での補聴器使用完全ガイド

補聴器を濡らしてしまったらどうする?

もし補聴器が濡れてしまった場合は、以下の手順で対処してください。

  1. 水分を拭きとる:柔らかいタオルや布で外側の水分を優しく拭きとります。
  2. 電源を切る:水分が付着した状態でのボタン操作は内部への浸潤を促す恐れがありますので、水分を拭きとってから電源を切ってください。 
  3. 電池を取り出す:電池式の場合は電池を取り出し、電池ボックス内の水分を拭きとります。充電式の場合は、電極部分の水分を拭きとってください。
  4. 乾燥させる:乾燥ケースまたは乾燥剤と一緒に密閉容器に入れ、一晩以上乾燥させます。

上記で応急処置を行った後、補聴器販売店でプロのメンテナンスを受けてください。

やってはいけないNG行為

  • ドライヤーで乾燥させる
  • 電子レンジやオーブンで乾燥させる
  • 濡れたまま使用を続ける

2 夏でも快適!補聴器を守る対策4選

2-1  乾燥ケースの正しい使い方

補聴器の乾燥ケースは、夏の補聴器ケアにおいて最も重要なアイテムです。毎晩の使用を習慣化することで、湿気による故障を大幅に減らすことができます。

乾燥ケース(乾燥剤式)

シリカゲルなどの乾燥剤を使用します。
電源不要で使用できる手軽さがあります。中に入っている乾燥剤は1~3か月ごとに新しいものに交換する必要があります。
補聴器購入時に付属品としてついてくるものもありますが、価格は1,000~1,500円程度で、乾燥剤を定期的に購入する必要があります。

ワイデックスの補聴器用乾燥ケース

電気式乾燥器

温風や風などで湿気を除去するもので、乾燥剤の定期的な交換が不要です。
乾燥だけでなく除菌・脱臭ができるものなど、各メーカーからさまざまなタイプの製品が登場しています。
価格は5,000~10,000円程度です。

補聴器を乾燥させるための機器

    関連記事:手間とコストを節約!補聴器乾燥剤の購入と使い方。賢いケア法も紹介

    2-2  こまめな掃除とお手入れ

    夏は特に汗や皮脂汚れが付きやすいため、毎日のお手入れが欠かせません
    正しい掃除方法を身につけることで、補聴器の性能を維持し、より長く快適に補聴器を使い続けることができます。

    関連記事:簡単3ステップで補聴器を清潔に|補聴器お手入れの基本を徹底解説

    2-3  汗カバーの活用

    「汗カバー」は、文字通り補聴器にカバーを装着して、補聴器を汗から守るアイテムです。
    主に耳かけ型補聴器に使われることが多く、補聴器本体へ直接汗が付着することを防ぎ、補聴器内部への汗の侵入を大幅に減らすことができます。

    速乾性や伸縮性がある布製のものが多く、自分の補聴器の形に合った、通気性の良い素材を選ぶことが大切です。

    ただし、カバーを付けているからとはいえ、完全に汗から守られるわけではありませんので、こまめに水分を拭く、補聴器自体を乾燥させるなどのケアが必要です。

    2-4  プロの補聴器メンテナンスを活用

    自分で毎日お手入れしていても、やはりプロによる定期的なメンテナンスが夏の補聴器ケアにおいて非常に重要です。

    補聴器販売店で、家庭では難しい内部のクリーニングや点検を行ってくれます。

    補聴器は普段から定期的に補聴器販売店でお手入れしてもらう必要がありますが、夏は少しだけ頻度を高めたほうがよいかもしれません。

    補聴器販売店でのクリーニング内容例

    • 補聴器専用機器での真空乾燥
    • 超音波洗浄によるイヤチップ等のクリーニング
    • 部品の交換(必要に応じて)
    • 補聴器の動作確認と音質調整
    補聴器を掃除するための専用機器
    補聴器クリーニング専用機器

    3 夏を快適に過ごす!補聴器選びのポイント

    3-1  防水機能の高い補聴器を選ぶ

    補聴器を購入する際、防水性能に注目して選ぶのも一つの選択肢です。

    現在販売されている補聴器の多くは、ある程度の防水機能を備えていますが、レベルには差があります。

    補聴器の防水性能の多くは、防水・防塵性能を表す国際保護等級「IP●●」と数字で表記されています。

    最初の数字が防塵(0~6)、二番目の数字が防水性能(0~8)を示し、IP68の場合は「防塵・防水ともに最高性能」という意味になります。

    ただし、防水機能があっても完全に水に濡れても大丈夫というわけではありません。あくまで「万が一の際の保護機能」として考え、基本的なケアは怠らないようにしましょう。

    国際保護等級のIP68の説明。防水防塵性が最高、という意味。

    3-2  購入時にチェックすべき使用・機能

    これからますます過酷になりそうな日本の夏。
    夏に使用することを想定するのなら、補聴器を選ぶ時には、防水機能以外にも次のような点をチェックしてください。

    その他の確認ポイント

    • 水分や汗に強いコーティング
    • 汗が内部に入りにくい設計
    • 音口の詰まりにくい構造
    • アレルギー対応素材
    • アフターサービスの充実度(保証期間など)

    4 他にもある!夏場に注意すべきポイント

    4-1  運動する際の注意点

    夏場は特に汗をかく季節ですので、運動する際は特に注意が必要です。

    激しい運動前は汗カバーを装着する、運動後は必ず補聴器を外して汗を拭くなどし、夜にはしっかりと乾燥させるなどのケアを忘れずに。

    また、屋外での運動時は帽子をかぶるなど、直射日光を避ける工夫も大切です。

    補聴器を外して運動する場合は、補聴器をケースに保管して失くさないよう注意してください。

    4-2  夏の外耳炎に注意

    夏は外耳炎が発症しやすい季節です。特に補聴器を使用している方は、通常の人よりもリスクが高くなります。

    高温多湿な環境では、補聴器と耳の間に汗や湿気がこもりやすくなります。
    この状態が続くと、細菌が繁殖しやすい環境となり、外耳炎を引き起こす可能性が高まります。
    また、補聴器の装着により外耳道が密閉され通気性が悪くなったり、補聴器や耳せんと外耳道の接触したりするのも要因の一つです。

    予防のためには、補聴器を清潔に保つことが重要です。

    毎日のお手入れと乾燥ケースでの保管を忘れずに行い、汗をかいた際はこまめに拭き取りましょう

    耳の痛みやかゆみ、分泌物が出た場合は、すぐに補聴器の使用を中止し、耳鼻科を受診してください。早期対応により、症状の悪化を防ぐことができます。

    耳が痛くて顔をしかめている画像

     

    まとめ

    夏の補聴器ケアは、以下の3つのポイントを押さえることが重要です。

    • 日々のケア習慣化:毎晩の乾燥ケース使用と、こまめなお手入れを心がける
    • 適切な対策グッズの活用:汗カバーや防水機能を最大限に活用する
    • プロのサポートを受ける:定期的な専門メンテナンスで トラブルを未然に防ぐ

    夏は補聴器にとって厳しい季節ですが、正しい知識と適切なケアがあれば、快適な補聴器ライフを送ることができます。

    暑い夏も、あなたの聞こえをサポートする補聴器と一緒に、元気に過ごしましょう。