突発性難聴の治療は時間との勝負。「そのうちに」が手遅れに?!

「なんの前触れもなく、急に耳が聞こえにくくなった」

こんな経験をした人は、意外と多いものですし、ご自身に実体験はなくても、知り合いにそうした経験をした人がいる人も多いのではないでしょうか。

そして、テレビや新聞、ネットで『突発性難聴』という言葉を聞いたりしたことがあるのでは?

突発性難聴とは、文字通り突然聴力が低下する難聴のことで、原因などははっきりわかっていません。

難聴にもいろいろな種類がありますが、この突発性難聴は一刻も早く治療しないと、聴力が元に戻らない可能性が高いと言われる非常に注意が必要な難聴です。

ここでは、突発性難聴かどうかのチェック方法取るべき行動など、実際に役に立つ情報を中心に取り上げます。

1 突発性難聴の兆しを見逃すな!! まずは症状をチェック

突発性難聴の症状には様々あり、自分でもはっきり自覚できるものから、そんなに大騒ぎするほどでもないと思い込みがちなものまで多岐にわたります。

まずは、注意するべき突発性難聴の主な症状を紹介します。

1-1 自覚しやすい典型的な症状

まずは、本人にも自覚しやすい典型的な症状を見てみましょう。

  • 数時間から数日で突然聴力の低下が進行した
  • 前触れなく片耳の聴力が低下した
  • 聴力の低下とともに激しい耳鳴りがある
  • 聴力低下に強い目まいを伴う
  • 吐き気嘔吐がある

これらの症状があった場合は、突発性難聴の疑いが強いため、一刻も早く耳鼻科医の診察を受けるようにしましょう。

1-2 ついつい見過ごされがちな症状

先に挙げた典型的な症状は、比較的自覚しやすく、日常生活に支障をきたす恐れもあるので、病院に行くという行動も取りやすいといえます。

一方で、症状によってはついつい見過ごされがちなものもあります。

次のように、大したことないと感じられる症状も、突発性難聴が原因の場合があります。

  • 軽い聴力の低下
  • 軽い耳鳴り
  • 耳が詰まった感じ
  • 声や音が響く感じ

こうした症状は、程度が軽いものですし、突発性難聴という「病気」と結び付きにくいため、軽視されてそのまま放置されてしまうことも少なくありません。

しかし、こうした一見深刻とは思えないような症状であっても、突発性難聴の兆候である場合が少なくありません。

少しでも気になることがあった場合は、軽視したり放置したりすることなく、すぐに耳鼻科の診察を受けるようにしましょう。

2 絶対に症状を軽視しないこと

突発性難聴が疑われる症状はさまさまです。

ですが、どんなささいな症状であっても、軽視せずにできるだけ早く病院で診察を受けること。

これだけは絶対に忘れないでください。

2-1 よくある思い込みは禁物

耳が突然聞こえづらくなっても、「疲れているから」「歳のせい」などと自分だけで安易に判断してしまいがちです。

また、症状が軽い場合は、「2-3日経てば元に戻るのでは」「そのうちよくなる」と考えがちです。

ですが、このような思い込みが治療の遅れに繋がり、聴力が回復しない原因になってしまうかもしれません。

大丈夫だと思い込んで放置すること=貴重な治療時間を失うことになります。

2-2 早期治療の重要性

突発性難聴は、治療の開始が遅れれば遅れるほど治ることが難しいといわれています。

症状が現れてから、できれば1週間以内、遅くても2週間以内に治療を始めることが望ましいとされています。このように突発性難聴の治療は一刻を争います。

しかし、治療を開始するタイミングが2週間以内であっても、聴力が元通りに回復する確率は約1/3とされます。

しかも、残念なことに、突発性難聴を100%治す治療法は、現時点では確立されていません。

出典:突発性難聴 | 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会

3 周囲のサポートの大切さ

突発性難聴に限らず、聴力の低下は自分では気が付きにくいものです。

特に突発性難聴の場合は、いかに早く本人が突発性難聴の可能性を感じいかに早く診察を受けるという行動をとるかが重要です。

本人に症状と危険性を自覚させるためには、家族など周囲の人の果たす役割が大きくなってきます。

3-1 変化のサインに気づいてあげること

自分では症状に気が付かなくても、周囲がその変化に気づくというケースはよく発生します。

また、本人が難聴のサインを認めたがらず、症状を軽視しがちだと、病院に行くという行動に移ることができないこともあります。

早期発見・早期治療のために、家族や周囲の果たす役割は非常に大きいということができます。

家族が気づくことができるサインとしては、以下のようなものがあります。

  • テレビの音量が急に大きくなった
  • いつもと反対の耳で電話を取るようになった
  • 呼んでも応えないことが増えた
  • 聞き間違い、聞き返しが増えた
  • 頭を振ったり、耳を触ったりするようになった
  • 話をする時に耳に手を当てる
  • 騒がしい場所を避けるようになった

家族や周囲にいる人たちの、このような日常生活での些細な変化を見逃さないようにしましょう。

3-2 早く治療を受けるように働きかけること

聴力低下や耳鳴りなどの自覚症状があっても、忙しさなどを理由にして病院に行くのを避けようとする、先延ばしにしようとするというのは誰にでもあることです。

どんな病気でも早めの治療が大切なのは同じですが、特に突発性難聴の場合は、いかに早く治療を開始できるかが、聴力回復の鍵を握っています。

本人が病院に行くことに及び腰であっても、周囲が診察を受けるように働きかける必要があります。

説得する上でのポイントを紹介します。

  • 突発性難聴が治るかどうかは、時間との勝負であることに気づいてもらう
  • 治療の開始が早ければ早いほど、聴力が回復する確率が高まることを理解してもらう
  • 治療開始が遅れると聴力が完全に戻らない恐れがあることを知ってもらう

理屈で説明する、感情に訴えるなど、診察を促す方法はさまざまですが、「躊躇っていたり、様子をみたりしている間に、回復のチャンスを逃してしまう」ということを理解してもらい、行動してもらうことが肝心です。

4 病院選びと治療方法

何度も繰り返しになりますが、突発性難聴は一刻も早い治療が必要です。そのため、症状を自覚したらすぐにでも病院に行ってください。

どんな病院、どんな科目で受診すればいいのか、そして、どんな治療を行うのかについて説明します。

4-1 病院選びと治療方法

さまざまな症状から突発性難聴が疑われる場合、最優先で受診すべき診療科は耳鼻咽喉科です。
「耳」の文字が入っているように、突発性難聴の診断や治療に最も専門性が高いのが耳鼻咽喉科だからです。

では、どんな病院を選ぶのがいいのでしょうか。
大学病院や総合病院、耳鼻咽喉科専門のクリニックなど、耳鼻咽喉科といっても病院にはさまざまな種類があります。

住まいの近くにどんな病院があるのかなどにもよりますが、ここでは、主な病院の種類とその特長を紹介します。

大学病院や総合病院の耳鼻咽喉科
  • 設備や専門の機器が整備されているため、MRIなど精密な検査が可能
  • 耳鼻咽喉科以外の診療科も併設しているため、他の病気との鑑別が必要な場合に対応しやすい
  • 入院治療が必要になった場合にも対応しやすい
  • 比較的混雑していることが多いため、待ち時間が長くなったり、予約に時間がかかったりするケースがある
  • クリニックからの紹介を前提としている病院も多いため、初診を受け付けてくれなかったり、初診料金がかかったりする場合がある
耳鼻咽喉科専門のクリニック
  • 比較的待ち時間が短く、予約が不要の場合が多いので通院しやすい
  • 聴力検査などの基本的な検査をすぐに受けやすい
  • 耳鼻咽喉科の専門医なので、他の科目との連携が難しくなりがち

いずれにしても、突発性難聴は早期の治療開始が重要になるため、夜間や休日で耳鼻咽喉科が受診できない時は、救急外来でも初期対応が可能な場合があります。

4-2 突発性難聴の治療

突発性難聴の治療方法については、以下のようなものがあります。

  • 内服や点滴の副腎皮質ステロイド薬による薬物療法が中心となる
  • 血管拡張薬(プロスタグランジンE1製剤/点滴治療)、ビタミンB12製剤、代謝促進薬(ATP製剤)などを使用することもある
  • 耳の中に直接ステロイドを注入する「ステロイド鼓室内注入療法」が行われる場合もある

4-3 治療の効果

個人差はありますが、上記の治療を1~3ヶ月続けるのが一般的とされています。

最終的な聴力レベルは、治療開始の時間と大きく関係し、残念ながら治療のスタートが遅れれば遅れるほど、聴力回復の見込みは低くなってしまいます。

2週間以内に治療を開始した場合の回復率はおよそ以下の通りといわれています。

  • 聴力がほぼ元通りに回復する:約1/3
  • 完全には回復しない:約1/3
  • 全く回復しない:約1/3

このように、早期に治療を開始できた場合でも、元通りに回復する割合はあまり高いとはいえず、聴力が低下した状態のままの人も少なくありません

また、残念ながら100%治す治療法は現時点では確立されていません。

出典:突発性難聴 | 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会

5 突発性難聴の予防方法

突発性難聴の原因ははっきりとわかっていませんが、ウイルス感染が原因という説や、内耳(耳の鼓膜よりさらに奥の部分)の血流不良といった説があります。
また、ストレスや睡眠不足が引き金になっているという説があります。

そのため、予防方法も完全には確立されておらず、生活習慣や食生活の改善などが中心になってきます。

ストレスを避け、睡眠に気をつける

慢性的なストレスは内耳の血流に悪影響を与える可能性があるとされています。
日ごろからストレスをためないようにし、リラックスを心がけるようにしましょう。
また、充分な睡眠時間(7~8時間)を確保するようにしてください。

聴覚を保護する

日常生活の中で自分の耳を守ることを心がけるようにしてください。
イヤホンで音楽を聞く場合は音量を控え目にする、長時間の使用はしないようにしましょう。
工事現場やライブ会場など騒音環境を避けるのが難しい場合は、耳せんを使用しましょう。

適度な運動などで血流を改善する

内耳の血流不全が突発性難聴の原因の一つとされています。
血流をよくするために、ウォーキングや筋トレなどの定期的な有酸素運動や適切な水分摂取を行うようにしましょう。
また、喫煙(血管を収縮させる恐れ)や過度な飲酒などを控えるようにしてください。

食生活に注意する

血流を良くするためにも、血管の健康を維持することが大切です。
ビタミンやミネラルが豊富な野菜や果物を積極的に摂取する、塩分控えめを心がける等、食生活にも気を配るようにしましょう。

まとめ:突発性難聴とは

  • 突発性難聴は、ある日突然片耳の聴力が大きく低下する病気です。
  • 多くは片耳に発症し、原因はよくかっていませんが、ウイルス感染、内耳の血流障害によって発症すると考えられています。
    ストレスや睡眠不足、自律神経の乱れが引き金になるともいわれています。
  • 一般的には40~60代に多く見られ、男女差はないようです。
  • 最近では、ミュージシャンや歌手が突発性難聴に悩んでいるというニュースも多く見受けられるように、現代人にとって無視できない危険な難聴だということができます。

出典:「聞こえる」を大切にする 「聞こえにくい」「聞こえない」に寄り添う(後編) | 厚生労働省

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