難聴者のパートナーである補聴器をできるだけ長持ちさせるためには、日々のお手入れは欠かせませんね。補聴器を購入した時に、「毎日乾燥剤を使って補聴器を乾燥させてください」と案内された方も多いのではないでしょうか。
この記事では、補聴器にはなぜ乾燥が必要なのか、また、補聴器のお手入れでとても重要なツール、乾燥剤の購入方法と使い方等について説明します。そして乾燥剤を使うよりも手軽な補聴器ケア方法も紹介します。
目次
1 なぜ補聴器を乾燥させる必要があるのか
毎日のお手入れで行う「補聴器の乾燥」は補聴器の寿命にも影響する、お手入れで一番重要なプロセスといっても過言ではありません。補聴器は毎日「補聴器にたまった湿気や水分を取り除く」必要があります。
どうしてでしょうか?
■故障を減らす
補聴器は精密機器です。汗や水分が付着し内部まで侵入すると、部品がサビたりし、それが原因で壊れることがあります。補聴器を使わない時に、乾燥剤が入った専用乾燥カップに入れて保管しておくことで、湿気や水分による故障リスクを減らすことができます。
■耳のトラブルを減らす
補聴器には汗に含まれる皮脂・耳あかも付着しやすいので、湿度が高い状態では細菌が繁殖しやすくなります。毎日耳に入れる補聴器をきちんと乾燥させ、清潔な状態にしておくと、外耳炎等のトラブルを防ぐことができます。
2 補聴器乾燥剤の種類
補聴器を乾燥させるのに使うのが「補聴器乾燥剤」です。この乾燥剤には、大きく分けて2種類あります。
■物理吸着を利用するタイプ
補聴器用乾燥剤は、「シリカゲル」を主成分としているものが主流です。シリカゲルの原料は「二酸化ケイ素」で、表面に緻密な孔がたくさんあり、その大きな表面積を生かして水分を吸着します。
水分を吸収しても膨らむことがなく、安全性が高いので、多くの補聴器メーカーがこのタイプの乾燥剤を提供しています。
シリカゲル乾燥剤は時間が経つにつれて吸着力がだんだん落ちるので、定期的に交換が必要です。目安として3カ月に1度程度ですが、詳しくは取扱説明書等を参照すると良いでしょう。
■化学反応を利用するタイプ
乾燥剤専門メーカーが作った、補聴器等の精密機械用乾燥剤もあります。シリカゲルと違って、塩化マグネシウム、酸化マグネシウム等の成分を使って、化学反応で水分を吸着・凝固させるものなります。
このタイプの吸湿効果はシリカゲルよりも高いと言われていますが、交換が必要な目安が2ヵ月と短めになることが多いです。
3 補聴器乾燥剤はどこに売っている?2つの購入方法
補聴器乾燥剤は定期交換が必要な消耗品ですので、効果が良いものをより簡単に安く入手したいですね。補聴器は家電のように普及しているわけではないので、補聴器用の乾燥剤を販売しているお店はあまり多くありません。
お手軽なのは、通っている補聴器販売店、あるいはオンラインのECサイトで購入する方法です。
■補聴器販売店で購入
補聴器メンテナンスのため3カ月に一度販売店に通うことが推奨されています。補聴器のメンテナンス・調整等で販売店に訪れる時に、ついでに乾燥剤を購入できます。
販売店に通うのは面倒と感じる人もいるかもしれませんが、定期的に専門家に聞こえ方や補聴器の性能を確認してもらったほうが、良い状態をより長く維持できます。
また販売店には高性能で専門的な乾燥機があったり、分解して補聴器内部までクリーニングしてもらえる場合があったりしますので、ぜひ定期的に販売店に行きましょう。
■オンラインで購入
オンラインで補聴器の電池やケア用品等を販売しているお店もあります。前述のように、補聴器乾燥剤は多くの場合ほぼ同じ成分ですので、メーカー純正でなくても、「補聴器用」と書かれていれば利用可能です。
100均のシリカゲルの使用はおすすめしません
100円ショップでも「シリカゲル」と書かれた乾燥剤を売っていますが、補聴器の乾燥に使えるのでしょうか。答えはズバリ「おすすめしません」。
同じ乾燥剤でも、使い道によって必要な量や成分が異なります。100均で販売している乾燥剤は、食品用、スーツケース用、靴用等の日常生活のシーンで利用するものが多いのです。補聴器のような精密機器に必要な乾燥度合いを満たせるかどうか一概には言えないため、使用しないほうが良いでしょう。
4 補聴器乾燥剤の使い方
補聴器の乾燥剤の使い方は、「毎晩寝る前に補聴器を乾燥剤入りの乾燥ケースにいれる」、それだけで朝起きたら、補聴器の乾燥が完了します。
しかし、乾燥効果を維持するため、乾燥剤の保存・交換時期等、気を付けたい点もあります。
■開封したらそのまま使い切る
乾燥剤は空気に触れるたびに湿気を吸収する性質があるので、一旦開封したらすぐ専用の乾燥ケースに入れ、そのまま取り出さずに使ってください。密封容器である乾燥ケースから出したり、ケースの蓋をあけっぱなしにすると、消耗が早くなる場合があります。
■電池式補聴器は電池を取り出して、電池室を開けたまま入れる
補聴器用の電池は乾燥に弱いので、補聴器用電池は乾燥ケースに入れず、適切な場所で保管してください。乾燥ケースによっては、電池を張り付ける磁石シートを付属している場合がありますので、活用しましょう。
補聴器を乾燥ケースに入れる時は、電池が入っていた場所がしっかりと乾燥するよう、電池室の蓋を開けた状態で乾燥ケースに入れます。
■交換時期を守る
乾燥剤はメーカーによって形や見た目が違いますが、本体の色や湿度感知紙の色で、交換時期を見極めることができます。交換時期を過ぎると吸湿効果が下がるので、取扱説明書に従って定期的に交換してください。
5 補聴器乾燥剤を長持ちさせる方法
補聴器乾燥剤購入の手間とコストをできるだけ抑えたいなら、補聴器乾燥剤を長持ちさせる方法も知っておきましょう。乾燥剤の消耗は、周りの空気の湿度に左右されます。そのため、以下2点に気をつければより長く使えます。
■乾燥剤を乾燥ケースに入れ、補聴器を出し入れする時しっかり閉める
乾燥ケースの代わりに大き目の箱やジップロックに入れる人もいますが、体積が大きいあるいは密封できないと、空気がたくさん入り、その分乾燥剤は頑張って吸収しないといけないため、消耗が早くなります。
できれば「密封」できる「小さめ」の補聴器専用乾燥ケースを使ってください。
■乾燥ケース自体も乾燥している場所で保管する
例えば浴室の鏡の裏の収納スペース等に乾燥ケースを保存すると、補聴器を出し入れする時に、その場所の湿った空気が乾燥ケースに入り込むので、消耗が早くなります。できれば乾燥した場所で保管しましょう。
6 補聴器乾燥剤の利用に関する2つの注意点
使い捨ての補聴器用乾燥剤ですが、「再利用」や「代用」はできないかと思いますよね。ですが、それはお勧めしません。その理由は
■乾燥剤を再利用することはおすすめしない
- シリカゲルは加熱して再利用する方法もあるが、推奨されていないし、加熱しても十分に効果が戻らない場合があるので、乾燥効果に影響
- 湿気と一緒に空気中のホコリや細菌も吸収して孔が詰まるので、だんだん除湿力が弱くなる
- フライパンや電子レンジで加熱する場合、包装が発火する等の恐れがある
■食品で使った乾燥剤で代用するのはおすすめしない
- 乾燥剤に付着した糖分、塩分、脂分等が補聴器に付着し、悪い影響を与える可能性がある
- 充分な乾燥能力を持っていない、または残っていない可能性が高い
7 補聴器乾燥機のおすすめ製品3選
補聴器を乾燥させる方法として、乾燥剤を使用する方法以外に、「補聴器専用の乾燥機」を使用する方法もあります。
補聴器乾燥機は電気を使って温風等を発生させ、短時間で補聴器にたまった湿気を取り除く機器です。ほとんどの補聴器メーカーは補聴器乾燥機も提供しています。効果・利便性・コストを長期的に見ると、乾燥機を購入したほうがおすすめです。
乾燥剤と乾燥機、それぞれのメリット・デメリットは下記の通りです。ぜひ自分のライフスタイルに合わせてご検討ください。
|
メリット |
デメリット |
補聴器専用乾燥剤 |
・安価で手軽に購入できる ・電源なしでも使える |
・定期的な交換が必要 |
補聴器専用乾燥機 |
・温風や空気の対流を使って確実に乾燥できる ・追加投資なしで何年間も使える |
・初期投資がかかる ・使用時に電源が必要 |
乾燥機は初期投資がかかりますが、高性能なものでも多くが1万円以下で購入できます。ここでは代表的な乾燥機3機種を紹介します。特に①と②の、乾燥剤との併用が必要ない補聴器乾燥機は、乾燥剤を購入する手間がかからないのでお勧めです。
①パーフェクトドライラックス
- 取り扱いが簡単で、補聴器を入れてボタンを押すだけで乾燥をスタート、乾燥が完了したら自動停止。
- 45℃を超えない優しい温風で急速に湿気を取り除く
- 360度のUVランプで雑菌やバクテリアを99%除菌
②ドライキャップUV2.1
- 上からかぶせて使うタイプ。充電式補聴器の場合、充電器ごと入れて充電しながら乾燥・除菌ができる
- 対流エアフローを使ってしっかり乾燥、UV除菌もできる
- 補聴器以外のUV除菌可能なアイテムに使える特大サイズ
③クイックエイド
- 本体搭載の循環ファンと乾燥剤のW効果でしっかり乾燥
- UVライプ搭載で除菌・脱臭ができる
- 単4アルカリ乾電池使用で場所を選ばず使える
8 まとめ
なぜ補聴器を乾燥させる必要があるのか
補聴器乾燥剤は、補聴器にたまった湿気や水分を取り除くものです。
補聴器乾燥剤の種類
- 物理吸着を利用するタイプ
- 化学反応を利用するタイプ
補聴器乾燥剤はどこに売っている?2つの購入方法
- 補聴器販売店で購入
- オンラインで購入
補聴器乾燥剤の使い方
- 開封したらそのまま使い切る
- 電池式補聴器は電池を取り出してから乾燥ケースに入れる
- 交換時期を守る
補聴器乾燥剤を長持ちさせる方法
- 乾燥剤を常に乾燥ケースに入れ、補聴器を出し入れする時しっかり閉める
- 乾燥ケース自体も乾燥している場所で保管する
補聴器乾燥剤の利用に関する2つの注意点
- 乾燥剤を再利用することはおすすめしない
- 食品で使った乾燥剤で代用するのはおすすめしない
補聴器乾燥機のおすすめ製品3選
- パーフェクトドライラックス
- ドライキャップUV2.1
- クイックエイド