難聴を放置しない! 家族を説得する方法と補聴器以外で聞こえにくさを改善する3つのポイント

「耳が遠くなった家族に耳鼻科受診をすすめると嫌がる」
「親に補聴器をプレゼントしようと思っているが、“年寄扱いするな”と怒り出す」

家族の難聴は本人だけの問題ではありません。 テレビの音が大きくてうるさかったり、近所迷惑になっていないか心配したり。 聞き返しが多くて何度も大きな声で話さなければならなかったり、ちゃんと聞き取れていないので話の内容がうまく伝わらなかったりと、家族にもさまざまな負担が。

そこで耳鼻科受診をすすめても、何かと理由を付けて行きたがらない、補聴器も嫌がる、さらに説得すればするほど意固地になったり、家族間でケンカになったりするケースもあるようです。

今回は、そんな頑固な家族を説得する方法をご紹介します。 また、コミュニケーションを改善するちょっとしたポイントや、生活を改善する様々な方法などもご紹介します。

1 もしかして難聴? 病院や補聴器を嫌がる家族の説得方法

 

聴力の低下は自覚しにくいため、周囲の人や家族は気付いていても、本人が難聴に気づいていない場合も。 また、本人は聞こえにくさについて自覚はあっても、認めたくないという気持ちや、家族や他人から「難聴だ」などと指摘されると逆に頑なになってしまう場合があります。

1-1 聞こえのチェックを一緒にやってみる

いきなり耳鼻科を受診するのに抵抗がある場合は、ご自宅で簡単にチェックできる「聞こえのチェック」をご家族と一緒にやってみてはいかがでしょうか。 自分の聞こえ方を客観的に見ることができるため、これがきっかけとなって耳鼻科受診や補聴器装用に繋がるかもしれません。

設問式の聞こえのチェック

設問式の聞こえのチェックは、いくつかの設問に「はい」「いいえ」で答えることで、聴力の目安を知ることができるものです。 ご本人が自覚していなくても、ご家族など周りの方が客観的にチェックすることができるのが特長です。 家族団らんの時などに気軽にチェックしてみるのも良いでしょう。

補聴器専門店グループ「ブルームヒアリング」のHPでは、聞こえにくいご本人向けだけでなく、そのご家族も一緒に確認できるチェックリストが用意されています。

ご本人様向けチェックリスト | 補聴器専門店ブルーム (bloomhearing.jp)

ご家族向けチェックリスト | 補聴器専門店ブルーム (bloomhearing.jp)

音を使った聞こえのチェック

イヤフォンやヘッドフォンで、実際に音を聞いて聴力レベルをチェックする方法です。ご自分のパソコンやスマートフォンを使って左右の耳それぞれの聞こえ方のレベルを確認します。実際の音を聞いて行うため、耳鼻科での聴力検査に比較的近い方法です。
チェック時の周囲の音環境や、イヤフォン・ヘッドフォンの性能によって結果にばらつきが出る場合がありますので、もし気になる場合は耳鼻科や、きちんとした設備のある補聴器販売店で測定してもらうことをおすすめします。

補聴器メーカー「ワイデックス」のHPではオンラインで聞こえをチェックすることができます。ヘッドフォンやイヤフォンを用意して静かな場所で実施してください。

ワイデックスの無料オンライン聞こえのチェック | Widex

1-2 もしも難聴を放置したときのリスクについて話し合う

難聴、特に加齢に伴う難聴は、放っておいても自然に良くなるものではありません。難聴を放置することでさらに聞こえが悪くなり、さまざまな問題が出てくるリスクがあります。

生活の中での危険回避ができなくなる

聴力が低下することで、家電製品のアラーム音や生活音が聞こえにくくなります。鍋を火にかけっぱなしにしていても気づかないなど、危険な場面も。また、外出時も車やバイクのエンジン音やクラクション、自転車が近付いてくる音などに気づけず、事故に遭遇する可能性もあります。

コミュニケーション困難による社会的孤立

周囲の人が言っていることが聞き取れない、何度も聞き返さなくてはならなくなる、テレビやラジオなどの生活音が大きくなり周囲から指摘される、周囲からの呼びかけに反応できず無視されたと誤解されるなど、生活の中でのコミュニケーションの問題が生じてきます。
その結果、人間関係の悪化に繋がったり、外出しなくなったりすることで、他人とのコミュニケーションの機会自体が減ってしまうという悪循環が生まれてしまいます。

認知症リスク

難聴によりコミュニケーションや会話が減るなど、外からの情報が入ってこない状態が長く続くと、脳への刺激が減少し、認知機能が低下、さらには認知症やうつに繋がるという可能性があります。
世界的な医学雑誌(2020,Lancet)の発表によると、「予防可能な要因の中で、難聴は認知症の最も大きな危険因子」として指摘されています。また最近のアメリカの研究では、より難聴度が高い人ほど認知症になるリスクが高いという結果が報告されました。健聴者に比べ高度難聴者では約5倍の認知症リスクがあるとされています。

出展:

Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission – The Lancet

ew Study Links Hearing Loss With Dementia in Older Adults; Highlights Potential Benefit of Hearing Aid Use | Hearing Health & Technology Matters (hearinghealthmatters.org)

1-3 影響力のある人に説得してもらう

病院に行きたくない、補聴器をつけたくないという人でも、他人の説得によって気持ちが変わる場合があります。子どもや孫から話してもらうのも良いでしょう。また、仲の良い友人や、かかりつけ医など、その人にとって影響力のある人に協力してもらうのも一つの方法です。

1-4 補聴器で改善した人の成功例を見せる

身近な人の補聴器の成功体験や、補聴器によって生活が大きく変わったエピソードを伝えてみましょう。身近な人のエピソードだと、自分事としてイメージしやすいので、「じゃあ自分も試してみようかな」と気持ちが変わるかもしれません。

2 補聴器に対してネガティブ状況が好転した3つの成功事例

前章でご紹介した方法「補聴器の成功例」を3つご紹介します。筆者が今まで実際に対応したお客様の事例です。身近に成功事例がなくても「こういう人もいるみたいだよ」と話として伝えるだけでも効果があるかもしれません。

成功事例その1:自分では気づかないリスクを家族に指摘されて決意した女性

  • 抱えていた課題・状況:60代女性、難聴の自覚なし。庭越しに近所の方から声を掛けられているのに気づかず、声をかけた近所の人は無視されたと思ったようで、気分を害した様子で去っていったという経験がある。
  • ネガティブ状況が好転したポイント:聞こえていない妻の様子を見ていた夫が「このままでは妻に友人がいなくなるのではないか」と心配して、補聴器使用をすすめた。
  • 補聴器購入後の変化:夫や友人とのコミュニケーションも改善し、日常生活も問題なく過ごせている。

成功事例その2:家族の言う事は聞かないが、知り合いに説得された父親

  • 抱えていた課題・状況:70代男性。本人に聞こえにくさの自覚はあるもののプライドが高く、医者にすすめられても補聴器装用に踏み切れない。家族が難聴について勉強し、補聴器のメリットや認知症になるリスクを説明しても、聞く耳を持ってくれない状態が何年も続いていた。
  • ネガティブ状況が好転したポイント:行きつけの仲の良いお寿司屋さんの大将が補聴器をつけはじめ、それがとても良いと聞いて補聴器使用に踏み切った。
  • 補聴器購入後の変化:以前とは態度が一変し、補聴器を友人や周囲の人に自慢するように。

成功事例その3:妻が補聴器をつけているのを見て、自分も補聴器を使う気になった夫

  • 抱えていた課題・状況:80代男性。10年前に妻と二人で聴力検査を受診し、夫婦ともに難聴と診断されたが妻のみ補聴器装用を開始した。妻より難聴の程度が軽い検査結果だったので「自分はまだまだ若い」と内心自慢に思っていた。
  • ネガティブ状況が好転したポイント:補聴器をつけ始めた妻が、趣味の集まりや旅行、友人との電話も頻繁になるなど以前に増して活動的になり、娘や孫との会話もスムーズで毎日がとても楽しそうで羨ましくなった。
  • 補聴器購入後の変化:夫婦二人とも補聴器をつけていることで聞こえに対するストレスもなくなり、日常生活が楽になった。

3 補聴器を嫌がる理由と説得トーク集

補聴器を嫌がる人は、何かと理由をつけて補聴器をつけたがらないものです。この章ではそんな「補聴器をつけない理由」を説得するための説得トークをご紹介します。
論破するためのトーク集ではありませんが、補聴器や病院にネガティブな人に対してポジティブな言葉を返してあげることで、少し前向きな気持ちになってくれることを期待します。

嫌がる理由1:つけるのが面倒、わずらわしい

説得トーク

「最近の補聴器は小さくて軽いから、重さも10グラムもないような軽い補聴器もたくさんあるよ。つけ外しも慣れれば簡単みたいだし、イヤホンみたいに耳に入れるだけで簡単につけられるものもあるみたい。」

説得ポイント

「補聴器はわずらわしい」という方のほとんどは、実際に補聴器をつけたことのない方のようです。それなのにわずらわしいと考えているのは、昔の大きな補聴器のイメージがあるからなのかもしれません。最新の補聴器は小型で軽量、つけ外しも簡単なものが増えていますので、その点を強調しましょう。

つけ外しが簡単な耳あな型補聴器

嫌がる理由2:補聴器は高くて買えない

説得トーク

「最近は10万円以下でも良い補聴器があるみたいだよ。お店によって分割払いもできるみたい。それでもやっぱり買うのが無理なら、月々何千円からの定額制で補聴器をレンタルする流行りのサブスクもあるんだって。」

説得ポイント

1台何十万円と高額なイメージの補聴器ですが、比較的安価な製品も出てきています。また、分割払いやサブスクリプションサービスなど、新しい補聴器サービスも登場していますので、色々な選択肢があることを知ってもらいましょう。

月額3,600円から使える補聴器のサブスク「耳より定額プラン」

【耳より定額プラン】 補聴器のサブスク、月額3,600円から – ワイデックス (33yori.com)

 

10万円以下の低価格補聴器

補聴器 | ONKYO

【Vibe補聴器】公式オンラインストア – Vibe補聴器 公式オンラインストア (vibe-hearing.jp)

嫌がる理由3:補聴器なんて年寄りくさくて嫌だ、カッコ悪い

説得トーク

「ネット広告とかで見たけど、最近の補聴器ってすごく小さくて、つけても全然わからないくらい目立たない補聴器もたくさんあるね。あと、逆に若い人がよく電車とかでつけてるBluetoothイヤホンみたいにおしゃれでカッコいいデザインの補聴器もあるみたいだよ。」

説得ポイント

昔の補聴器のイメージのままネガティブな印象を持たれている方が多いようです。最新補聴器は見た目もスタイリッシュでカラーバリエーションもおしゃれなものが多く、ワイヤレスイヤフォンと区別がつかないようなデザインのものも多く出ています。補聴器メーカーのHPなどで最新補聴器の画像を見てもらうのも良いかもしれません。

おすすめの最新補聴器

スリムでカラー豊富な耳かけタイプ WIDEX SmartRIC

スタイリッシュなイヤフォンタイプ Signia Active Pro

嫌がる理由4:補聴器使ってもどうせ聞こえないってよく聞くから

説得トーク

「補聴器ってちゃんと一人ひとりの聴力に細かく合わせないとダメなんだって。きちんとした補聴器販売店で専門の人に調整してもらえば大丈夫。買わなくてもまずは無料でお試しもできるみたいだから一度試してみたら?」

説得ポイント

口コミや知人から聞いた失敗談などから、ネガティブな印象を持っている方も多いようです。失敗談の中には、通販で買った「実は補聴器ではない機器」を使いこなせず失敗するケースも多くみられます。補聴器はきちんとした場所で購入し、正しく使うことで効果を得られることを伝えましょう。

4 補聴器以外で聞こえにくさを改善する3つの方法

いろいろな方法をご紹介しましたが、それでも説得に時間がかかったり、なかなか頑固で言う事を聞いてくれない方もいらっしゃいます。耳鼻科や補聴器以外の方法で「今すぐなんとかしたい!」という方に、補聴器以外で聞こえにくさやコミュニケーションを改善する方法をご紹介します。

4-1 話しかたを工夫する

難聴者本人ではなく、家族など周囲の人たちのちょっとした工夫でコミュニケーションを改善することは可能です。以下のポイントに気を付けて対応してみましょう。

  • 口元を見せる:口の動きを見せるだけで音を認識しやすくなります。
  • ゆっくり・はっきりと話す
  • 正面から向かい合って話す
  • 静かな場所で話す:難聴になると、人の声と雑音を区別することが難しくなります。テレビの音はできるだけ小さくするなど、雑音の影響を受けにくい静かな場所で話すようにしましょう。
  • 注意を向けてから話し始める
  • 言い回しを変える:別の表現や単語を使うことで理解しやすくなります。

よくあるNGポイント

耳が遠い人や補聴器をつけている人に対して、顔の近くで大声で話しかけたり、耳に向かって話したりする場面を見たことはありませんか?

一見良く聞こえそうに思えますが、この行動実はNG。必要以上に大きな声で話しかけられると、音が響いて逆に聴き取りにくくなる場合があります。

正面からほどよい大きさの声でゆっくり・はっきり話すことが重要です。

4-2 接しかたを工夫する

対面で話をする時、声だけでなく身振り手振りや他の情報を追加すると、視覚からも話の内容を理解しやすくなります。

  • 身ぶり・手ぶりを交えて視覚的に理解できるようにする
  • 筆談やコミュニケーションボードを使う

4-3 難聴サポートツールを活用する

話し方や対応方法以外にも、日常生活のさまざまな場面で聞こえをサポートする機器を活用する方法もあります。また、聴力が悪化しないように耳の健康を保つサプリメントや漢方薬、マッサージ器具なども販売されています。

ツール 特長 購入場所 価格の目安
集音器・助聴器 音を増幅し大きくする機器。補聴器より簡易的な機能のものが多く手軽に利用できる。
  • 家電量販店
  • インターネット通販
5,000円~3万円
テレビ用スピーカー テレビの音を手元にあるスピーカーで聞ける機器。家族と同じ音量でテレビ視聴が可能。
  • 家電量販店
  • インターネット通販
5,000円~2万円
手元用スピーカー 離れた場所の人の声を手元で大きく聞くための機器。
  • 家電量販店
  • インターネット通販
3,000円~2万円
補聴機能付きイヤフォン 通常のイヤフォン機能に加え、周囲の音や会話を増幅する機能が付加されているもの。
  • 家電量販店
  • インターネット通販
1~6万円

漢方薬・サプリメント

耳の血流を良くする薬効の漢方薬や、耳に良いとされる栄養成分が配合されたサプリメント。
  • 薬局
  • ドラッグストア
  • インターネット通販
1,000~5,000円

まとめ

  • 病院や補聴器を嫌がる家族の説得法
    • 「聞こえのチェック」を一緒にやってみる
    • 難聴を放置したときのリスクについて話し合ってみる
    • 影響力のある人に説得してもらう
    • 補聴器でネガティブ状況が改善した人の成功例を見せる

  • 補聴器を嫌がる理由と説得トーク例
    • つけるのが面倒・わずらわしい→最近は小さくて軽い補聴器がたくさんあるし、耳に入れるだけで簡単につけられるものもある
    • 補聴器は高くて買えない→10万円以下の補聴器もあるし、一括が難しければサブスクもある

  • 補聴器以外で聞こえにくさを改善する方法
    • ゆっくりはっきり話す・正面から話すなど話しかたを工夫する
    • 身振り手振りを交えて話すなど接し方を工夫する
    • テレビ用スピーカーなどの難聴サポートツールを活用する