「認知症」と「難聴」の関係とは?その理由と対策を徹底解説

難聴は認知症の危険因子

難聴は「認知症の最大の危険因子」だということを知っていますか?認知症の原因として、一番多いのが難聴なのです。

では難聴になると、必ず認知症になるのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。正しい知識を知って、正しく対策してください。

1 難聴は認知症の危険因子

 

難聴になると認知症のリスクが高くなる。そんなショッキングな報告が厚生労働省から発表されています。

超高齢社会・日本に暮らす私たちにとって身近な問題、「認知症と難聴」のことを、家族と一緒に考えてみませんか?

 

日本の高齢者4人に1人が認知症

  •  2012年、日本の認知症患者は462万人でした。(厚生労働省調べ)

  • 高齢者の4人に1人は認知症、またはその予備軍といわれています。

  • 2025年には、患者数が700万人を超えると見られています。

2015年1月、政府は高齢化が急速に進む日本の問題に、認知症の対策強化に向けての国家戦略である新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)を策定しました。

その中で、認知症の危険因子として「難聴」が「加齢」や「高血圧」他と並んで挙げられています。

更に2020年、世界的医学誌LANCETは世界的アルツハイマー協会会議の総説として、難聴を放置することは修正可能な認知症の最大のリスク要因であると報告しました。

認知症の危険因子

 

2 難聴と認知症の関係

難聴は進行するにつれ、様々な影響を及ぼします。

難聴になると、周囲からの情報量が絶対的に減少します。その結果、他人の言っていることよく聞きとれない、会話がうまく成立しない、という経験を繰り返し、周囲との関わりを避けるようになります。

そして、だんだん社会との交流が減少し、精神的健康にも影響を与え、認知機能の低下をもたらすことがあります。

難聴があると必ずしも認知症になるわけではありませんが、難聴によりコミュニケーションが少なくなったり、社会との関わりが減ったりすることで認知機能に影響が出る可能性があります。

難聴が認知機能に与える影響

※出典:(公財)テクノエイド協会「福祉用具シリーズ vol.19」

 

3 研究で明らかにされた難聴と認知機能低下の関係性

聴力の低下は認知機能の低下に関連するということは、さまざまな研究でも示されています。

例えばアメリカで行われた研究で、1年歳を取ることでどの程度認知機能が低下するかを測定したものがあります。

健康な人の認知機能は、「1年間で0.5減」でした。
これに対して、25デシベルの難聴をもつ人は「1年間で3.86」でした。

つまり、健康な人なら約7年かけて進行する認知機能低下が、難聴者には約1年で起こりうるということになります。

難聴が認知症の発症要因の一つであることは、国内外問わず多くの研究機関からも注目を集めています。

出典: Lin FR: Journal of Gerontology, 2011 National Health and Nutritional Examination Survey (NHANES)

4 そもそも難聴って?

難聴にも様々な種類がありますが、ここでは歳を取ると発症する「加齢性難聴」について取り上げています。

難聴の種類については、こちらの記事で詳しく解説しています。
難聴の種類別特徴や症状。原因・治療・対策までわかりやすく解説

加齢性難聴は年を重ねるにつれ、誰でも起こりうるものです。聴力の低下は30代からすでに始まっており、難聴が進むにつれて、聞こえる音が減っていきます。

下の図は、年齢によってどの範囲の音を聞き取れるかを示したものです。一番上の線は「20~24歳の人が聞き取れる範囲」を示しており、この線より下のエリアが聞き取れる範囲です。
見てわかるように、年齢が上がるにつれて、線が下がっていきます。つまり、聞き取れる範囲がだんだん狭くなるということです。
しかも、高い音が早く聞き取れなくなっていくことが分かります。

黄色いエリアは「人の声」が含まれる領域なので、声の一部分がだんだん聞こえなくなることが分かります。
これが、「しゃべっている声は聞こえるけど、何を言っているのか分からない」「男性の声は聞こえるのに、女性や子供の声は聞き取りづらい」という症状の一因です。

聴力図

 

こんなことありませんか

自分の聴力がどのような状態なのかを知るための、簡単な指標があります。
次のようなことが該当する場合は、聴力が低下しているかもしれません。

難聴の症状

  • テレビの音が大きいと言われる
  • 会議や習い事で聞き取れない
  • お友達との会話が楽しめない

難聴のセルフチェックの方法については、こちらで詳しく説明しています。
補聴器はいつから使い始める?聞こえづらくなったらすぐにでも!

聞こえにくさは自覚しにくいもの

加齢による聞こえは徐々に低下するため、本人も気づかないまま対応が遅れることが少なくありません。また難聴は見えにくい障害で周囲の人から理解されにくい側面もあります。

「テレビの音が大きすぎるので一緒に見ない」、「同じことを繰り返し尋ねられるので面倒」など、人間関係にも影響を及ぼすこともあります。

 

難聴の兆候

難聴が進むとどうなるの?

だんだんコミュニケーションをとるのが、おっくうになってきます。

・注意力の低下

・会話の聞き取りの低下

・記憶力の低下

・イライラ、ストレス、憂うつ等の情緒不安定

・引きこもりや社会からの孤立化 

などの症状や状態になっていきます。個人差はありますが、難聴を放置することでこれらが進行していってしまいます。

5 聴覚情報は様々な情動を引き起こす非常に大事なもの

会話コミュニケーションは、「耳に言葉が入ること」から始まります。耳で言葉を聞いて、脳で思考し、言葉で返す、というのが会話をする時の処理プロセスです。

つまり聴覚は、思考をするための大事な情報源であり、その聴覚によって、「楽しい」、「うれしい」等の情動を引き起こします

したがって聴覚は、コミュニケーションをする上でとても大事なのです。

聴覚情報は様々な情動を引き起こす非常に大事なもの

6 補聴器を使うことで、脳に音を届けましょう

難聴の進行をそのままにしておくと、コミュニケーションが不足し、孤立が進み、最終的には認知機能の低下やうつを発症するリスクが高まります

早めに補聴器を使うことで脳に音を届けましょう。早めの対策が大事です。

補聴器を使うことで、脳に音を届けましょう

※補聴器で必ずしも認知症が予防できるわけではありません。

 

7 補聴器購入の流れ

補聴器を使ってみたいと思ったら、まずは耳鼻咽喉科に行って診察を受けましょう。あなたの症状に補聴器が役に立つと診断されたら、補聴器販売店に行って補聴器を試してください。

補聴器取扱店では、あなたの聞こえの状態を調べると同時に、あなたの生活習慣などを確認したうえで、一人ひとりに最適な補聴器の種類を選んでくれます。

補聴器購入の流れ

補聴器の購入方法は、こちらで確認してみてください。

補聴器はどこで買う?自分に合う補聴器のお店がスグわかる6つのコツ!

購入するだけではなく、お試しレンタルや月額定額など、様々なはじめ方があります。

あなたに合った補聴器のはじめ方は?

補聴器をはじめる方法はいろいろあります

8 周りの方へのお願い

聞こえづらい方にとっては、周りの方の少しの気遣いがあることで、聞き取りやすくなります。以下の点に配慮して、会話をたくさん楽しみましょう。

周りの方へのお願い

また、家族や親しい人が難聴になったときには、こちらも参考にしてください。

家族が難聴かも?4つの兆候と今すぐ家族がしてあげるべきコト

 

難聴を放置しない! 家族を説得する方法と補聴器以外で聞こえにくさを改善する3つのポイント

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