
思い出の詰まった時計、宝石、アクセサリーなどを、親や親戚から譲り受けることはよくありますよね。皆さんもそのような品をお持ちかもしれません。
それでは、「補聴器を譲られた場合」はどうでしょうか?
親戚や知人が使わなくなった補聴器をもらったとします。この補聴器をあなたは使うことはできるのでしょうか?
この記事では、他の人から譲渡された補聴器を使うことができるのかについてご紹介します。新品との違いや使う方法、注意点も解説してきますので参考にしてみてください。
1 譲られた補聴器は使えるのか?
結論からいうと、親戚や知人など、他人から譲られた補聴器を使うことは可能です。
ただし、他の人からもらった補聴器には、様々な制約とリスクが存在するため、積極的にはおすすめできません。
もし補聴器を譲られた場合は、この記事に記載されている内容を確認いただき、制約やリスクを理解したうえで使用してください。
なおオークションやフリマアプリなどで中古品を購入するのは避けるようにしましょう。
管理医療機器である補聴器の販売には、たとえ個人でも様々な資格が必要なので、中古品販売は違法である可能性が高いからです。
あくまでほかの人から無償で譲り受けた場合に限って、法的には問題はない、ということです。
2 新品で購入した補聴器との違い
補聴器の性能について
補聴器の技術革新は日進月歩で、各メーカーから最新の器種が約2年~3年おきに発売されています。
そのため、その補聴器の性能は前オーナーがいつ購入したかで変わってきます。
例えば5年以上前に購入した補聴器でしたら、現在販売されているものと比べると、性能はかなり劣っていると言えるでしょう。
譲られた補聴器にどのような機能が搭載されているのかは、購入当時の取扱説明書や、ウェブで検索することで確認ができるかもしれません。
補聴器の修理について
譲られた補聴器を使用するにあたり、一番気をつけたいのが修理についてです。
修理の対応は、メーカーによって内容や期間が違います。特に譲渡された補聴器については、通常の保証と違う場合があるので、確認するようにしましょう。
例えば、補聴器メーカー「スターキー」は、ウェブサイト上で譲渡された補聴器について下記のように記載しています。
譲渡された補聴器の保証は受けられますか?(スターキー社)
- スターキーの保証制度は初回購入時のユーザー登録者に紐づいています。
- 耳あな型(オーダーメイド)補聴器の場合、譲渡された補聴器は修理対応ができません。オーダーメイド作成のため、家族間であってもお断りさせていただいております。
- 耳かけ型(既製品)補聴器の場合、修理対応はできますが、無償修理保証および得々保証(一律修理価格)は適応外となり、積算修理となります。
出典:スターキー社ウェブサイト
このように、オーダーメイドで製作する耳あな型補聴器の場合は、修理が不可であること、耳かけ型補聴器の場合は、メーカー保証は受けられないことがわかります。
スターキー以外のどのメーカーでも、新品の補聴器と比べて保証の質が大きく低下すると、言ってよいでしょう。
補聴器販売店の対応について
補聴器というのは、買ってそのまま使うのではなく、音量や機能などをその人の聴力に合わせて細かく調整する必要があります。この調整は補聴器販売店で行われ、自分では行えません。
補聴器販売店では、基本的にその店で販売した補聴器に対しては「無償」で音質調整やメンテナンスをしてくれることが多いです。
ですが、譲られた補聴器の場合は違います。調整やメンテナンスが有償となる場合も多く、そもそも対応できないと言われることもあります。
このように、もらった補聴器を使うにはいくつかの「デメリット」とも言える状況が付きまといます。
それでも、どうしても譲られた補聴器を使いたい場合は、どうすればよいのでしょうか?
3 譲られた補聴器を使う方法
補聴器販売店に訪問する
まずは、必ず補聴器販売店に行きましょう。
譲られた補聴器をそのまま使用するのは危険です。補聴器は装用者の耳に合わせる必要があるためです。
前オーナーが購入した補聴器販売店に訪問できるのであれば、それがベストの方法です。前オーナーやその家族に、どの補聴器販売店に行っていたかを聞いてみてください。
もしその店に行くことができないのなら、近隣の補聴器販売店に相談に行きましょう。行く前に一度店に連絡し、その補聴器のメーカーを取扱っているかどうかを確認したほうが良いでしょう。
次からは補聴器販売店での対応をご紹介してきます。
これらの対応は、店舗によって全く違う場合もありますし、譲られた補聴器の場合は有償となることがあるので、留意してください。
聴力に補聴器が合っているか確認する
まず譲られた補聴器が自身の聴力に合っているのか、補聴器販売店で確認してもらいましょう。これはとても重要なステップです。
補聴器は器種により対応できる難聴度が異なります。
例えば譲られた補聴器が高重度難聴用で、設定されている音量が大きい場合、ご自身が軽中等度難聴ですと音が大きすぎて耳を傷める可能性もあります。
逆に、補聴器が軽度難聴用で、あなたはもっと重い難聴だった場合は、その補聴器を使っても補聴の効果が得られないでしょう。
そのため、補聴器販売店で聴力を測定してもらい、聴力と補聴器が合致するのか確認してもらいましょう。
形状を耳に合わせてもらう
譲られた補聴器が「オーダーメイド補聴器」の場合は、特に注意が必要です。
オーダーメイド補聴器は、一人ひとりの耳の形に合わせた形状になっています。耳の形は人によって全く違うので、他の人の耳の形に合わせて作られた補聴器は、自分にはフィットしないことがほとんどです。
メーカーによっては、前オーナーの耳の形に合わせて製作されたものを、自身の耳に合わせて再製作してもらえる場合もあります。
ですが、この対応をしていないメーカーもあるので、補聴器販売店を通してメーカーに確認する必要があります。
耳かけ型補聴器の場合は、補聴器販売店で自身の耳の形や大きさに合わせて耳せんなどの部品の交換をしてもらう必要があります。
音質を調整してもらう
補聴器は装用者の聴力に合わせて音質調整する必要があります。測定した聴力をもとに補聴器販売店で音質調整をしてくれます。
ただし、補聴器の設定でこの調整ができなくなっている場合もあります。(ロックがかかっている)その場合、音の調整が一切できず、その補聴器を使うことはできないでしょう。
ロックがかかっているかどうかも、補聴器販売店で確認することができます。
4 譲られた補聴器を使う際の注意点
耳あな型は使えない可能性が高い
オーダーメイド耳あな型補聴器の場合は、前オーナーの耳の形に合わせて製作されているため、他の人の耳には合いません。無理に装用すると耳を傷める可能性がありますので、おすすめできません。
オーダーメイド耳あな型補聴器は上記で記載したとおり、メーカーによっては修理の対応ができないこともあります。使用したい場合は、そのメーカーが取り扱いのある補聴器販売店に確認をしてみてください。
聴力に合っていないと耳を傷める可能性がある
譲られた補聴器をそのまま耳に入れるのは危険です。必要以上に大きな音が出ている場合があり、耳を傷め、余計に聴力が悪化する可能性もあるからです。
補聴器は聴力によって対応する器種が違い、また装用者の聴力に合わせて音質調整して使用するものです。譲られた補聴器は必ず補聴器販売店に相談してから使用するようにしてください。
メーカー保証が受けられない可能性がある
メーカー保証とは、修理保証や紛失保証などです。基本的に購入者以外はメーカー保証を受けることはできないと考えた方が良いでしょう。つまり、故障すると高額な修理費用を支払う必要があります。
また、譲られた補聴器が古い場合は、修理期間が終了している可能性もあります。その場合はメーカーでも修理をすることができません。
衛生面での問題がある可能性がある
補聴器は耳に装着して、肌に直接触れさせて使用するものです。そのため、耳の病気など感染症の観点から、衛生的に問題がある可能性があります。
オークションサイト、フリマサイトなどで購入は違法販売の可能性が高い
補聴器は「管理医療機器」です。補聴器を販売する場合は、「医療機器販売業の許可または届け出」が必要です。
個人で補聴器を転売するような場合でも、この「医療機器販売業の許可または届出」が必要です。また中古品を販売する場合は、販売者は事前にメーカーに通知する必要があります。
そのためオークションサイトやフリマサイトなどで販売されている中古品は違法の可能性が高いと言えます。購入するとトラブルに巻き込まれかねないので購入は止めましょう。
大切な人が使っていた、思い入れがある補聴器。それを譲られたら、大切に使いたいと思うのが人の心ですね。
ですが、それを使うにはリスクがあることも知っておいてください。
大切な思いをどのように受け取るのか、判断に困る場合は補聴器販売店に相談してみてください。