家族が難聴かも?4つの兆候と今すぐ家族がしてあげるべきコト

家族が難聴になったら、何はともあれ早急に対応が必要です。親や家族の難聴に気がついたとき、あなたはどのような行動をとりますか?

大きな声で話せば会話はできるのだから、テレビの音量を上げれば聞き取れているのだから、ちょっと不便だけどまだしばらくはこのままで良いだろう…そう考える人は少なくありません。

ですが、難聴を放置すると、予想もしない様々な問題が発生します。

人間関係や社会参加にも影響を与え、更には精神的健康、脳の認知機能にも影響を及ぼす可能性があります。

家族が難聴になったら、本人の気持ちに寄り添いながらも、速やかに行動する必要があります。

テレビの音量、聞き間違い、聞こえているフリ、聞き返しなど、難聴の兆候を4つのポイントにまとめ、すぐにでも家族がやるべきことをご説明します。

 

目次

1.家族が難聴かも・・・疑いのある兆候4つ

下記4つのうち1つでも思い当たるものがあれば、難聴である可能性が高いでしょう。

テレビの音量が大きくなっている

テレビやラジオのボリュームが、家族が好む音量よりも大きい

聞き間違いが多い

7時(しちじ)を1時(いちじ)と聞き間違えたり、魚(さかな)を高菜(たかな)と聞き間違えたりする

聞こえているふりをする

本当は聞こえていない、聞き取れていないのに、聞こえているフリをする

聞き返すことが頻繁になった

何度も聞き返してくることが日常茶飯事になってきた

 

2.難聴の疑いがある場合、家族と一緒にまず耳鼻科に行こう

 

難聴の兆候が見られるのなら、すぐに、いち早く耳鼻咽喉科に行くことをお勧めします。

理由は3つあります。

・一部の難聴は投薬治療や手術によって治療できる見込みがあるから

・難聴を放置すると症状が悪化するから

・難聴を放置すると、難聴以外の困りごとが出てくるから

 

では一つずつみていきましょう。

2-1 行くべき理由その1:一部の難聴は投薬治療や手術によって治療できる見込みがあるから

中耳炎などによる「伝音性難聴」や、ウィルス性の「感音性難聴」などを発症している場合、投薬治療や手術によって治療の見込みがあります。これらの場合、なるべく早く治療を始めることで、悪化を防いだり、改善が早まったりします

また、突発性難聴の場合は、発症から1週間以内に治療を始めることで、治癒の可能性が高まります

2-2 行くべき理由その2:難聴を放置すると、症状が悪化するから

加齢以外に問題のない加齢性難聴でも、早めの受診が推奨されます。加齢性難聴は、だんだんと進行するのみで、改善することはほとんどありません。そのため、対処するのが遅れれば、それだけ難聴が進行することになります。

また、難聴を放置することで、難聴以外の問題が発生することがあります。難聴は認知症の最大の危険因子と言われています。

2-3 行くべき理由その3:難聴を放置すると、難聴以外の困りごとが出てくるから

難聴が引き起こす困りごとは、単に「音が聞こえない」では済みません。
音が良く聞こえないまま外出すると、車や自転車の接近に気づかずに、危険な状態になってしまうかもしれません。

会話が続かないことで人付き合いが疎遠になり、社会参加が減り、その結果、精神健康にも影響を与えることがあります。

そして、社会とのつながりが減ることで、認知機能に影響が出てしまう可能性もあります。

また、難聴を長期間放置した後で補聴器を使いだしても、脳の「言葉を理解する力」が衰えてしまっていて、「音は聞こえるのに、何を言っているのか理解できない」ことになってしまいます。

そのため、音が充分に聞こえていない」期間をなるべく短くする必要があるのです。

 

3.あくまで寄り添う立ち位置で!家族に耳鼻科受診を促す伝え方

耳鼻科受診を促す際は、相手を心配しているのだというスタンスを崩さずに、難聴者の気持ちに寄り添いましょう。

受診を嫌がるには理由がある筈です。

「お父さん(お母さん)の事が心配だから、私のためにも病院を受診してほしい」という気持ちが伝わるように話すことが最重要です。

年をとって、衰えてしまったことを認めたがらない当事者と、それを心配する家族の間で意思の疎通が難しい場合、客観的な判断ができる第三者に間に入ってもらって話を進めるという方法もあります。

いずれの場合もなるべく嘘をつかず、決して無理やりに病院などへ連れて行くようなことはしないようにしましょう。

信頼関係を損ねてしまい、以降の行動も頑なになってしまいます。

3-1 NGな伝え方例

  • 「私の耳の具合が悪いから病院に行くんだけど、一緒に診断を聞いてくれる?」→付き添いという形で依頼しておいて、実際には本人の受診だった
  • (頭ごなしに)「全然聞こえていないんだから、耳鼻科に行くしかないでしょう?」
  • (行きたくないといっているのに)無理やり連れていく

NGのポイント:

嘘をついて受診させる

気持ちを理解せずに受診を勧める

無理やり連れていく

このような対応だと頑なになり、かえって受診を拒むようになってしまいます。

3-2 良い伝え方例

  • 優しく問いかける

「最近、少し聞こえにくくなっている気がするけど、どうかな?私が心配だから、一度診てもらえると安心なんだけど。」

  • 心配している気持ちを伝える

「お父さん(お母さん)の健康が大切だから、最近のことが少し心配になってるんだ。何も問題がないとわかるだけでも、みんな安心できると思うから、耳鼻科で診てもらうのはどうかな?」

  • 相手の意志を尊重する

「無理にとは言わないけど、ちょっとでも心配なことがあれば、早めに診てもらった方が安心できると思うよ。どう思う?」

  • 一緒にサポートする姿勢を示す

「もし病院に行くことが少し不安だったら、私も一緒に行くよ。診てもらった後に、近くのカフェでお茶でもしようか。」

  • 共通の利益を強調する

「家族みんなが安心できるように、お父さん(お母さん)が元気でいてくれることが一番だと思う。だから、一度耳鼻科で診てもらってもらえると、私たちも安心できるよ。」

「孫たちが、もっといっぱいおしゃべりしたいと言っていたよ。あの子たちともっといっぱい遊ぶためにも、考えてみない?」 

良い伝え方のポイント

  • 共感を示す: 「最近少し聞こえにくいと感じているみたいで心配だよ。何かあったら困るから、一度診てもらうと安心できると思うんだ。」といったように、相手の気持ちを理解しようとする姿勢を見せましょう。

  • 相手の立場を尊重する: 「お父さんが元気でいてくれることが、家族みんなにとって大切だから、私たちのためにも一度診てもらってほしいな。」と、相手の価値観や感情を尊重しつつ伝えることが大切です。

  • 具体的な利点を伝える: 「もし何か問題があれば、早めに対処できるし、安心できるよ。」と、受診することのメリットを具体的に伝えると良いでしょう。

  • 選択肢を提供する: 「どの病院が良いか一緒に考えようか?」や「時間がある時に行けるように、予定を合わせようか?」など、相手に選択の余地を与え、協力的な姿勢を示すことが重要です。

4.難聴だった場合の治療・対応

歳を重ねるにつれて発症する加齢性難聴は現時点では有効な「治療法」はありません。ですが、「対処法」はあります。その一つが補聴器です。補聴器を使用することによって聞こえ方を補い、日常生活の質を向上させることができます。

まずは耳鼻咽喉科を受診し、難聴の種類と程度を確認してもらいましょう。そして、補聴器の使用が有効であると診断された場合、なるべく早く補聴器を装用し始めることをお勧めします。

受診は「補聴器相談医」のいる病院が望ましいでしょう。

※補聴器相談医とは:聴力に問題のある人が補聴器を適切に使うための指導をおこなう医師で、日本耳鼻咽喉科学会が、一定の条件を満たした耳鼻科医を補聴器相談医として指定します。補聴器相談医を調べるには、補聴器相談医名簿が便利です。

耳鼻科に行くべき理由については、こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひ確認してみてください。
難聴かもと思ったら耳鼻科に行くべき3つの理由。治療法や対策も

5.難聴の困りごとを解決する「補聴器」という選択肢

「補聴器」のメリット

補聴器は普通の大きさの声で話される会話が聞き取りにくくなったときに、はっきりと聞くための管理医療機器()です。

※管理医療機器:平成17年4月1日に改正された薬事法により、補聴器も管理医療機器に分類が変更された。管理医療機器を販売する場合、営業所の管理者の届出が必要となる。管理医療機器は医療機器のリスク分類(副作用・機能障害を生じた場合の人の生命・健康に対するリスクの大きさ別に3つに分類)のなかで、クラスIIの「リスクが比較的低い」に分類されている。
※補聴器のやさしい解説|一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 (jibika.or.jp) より引用

 

補聴器を使うメリットは大きく6つあります。

1:聞こえ方の改善

補聴器は、聴力が低下した部分を補い、周囲の音をクリアに聞こえるようにします。これにより、会話や音楽などを楽しむことができ、生活の質が向上します。

2:コミュニケーションの向上

聴力が改善されることで、家族や友人、職場でのコミュニケーションがスムーズになり、社会的な孤立感を軽減させます。これにより、ストレスが減り、精神的な健康も向上します。

3:安全性の向上

補聴器を使うことで、車の音や警告音、アナウンスなど、重要な音を聞き逃すことが少なくなり、日常生活での安全性が向上します。

4:認知機能の維持の可能性

聴力の低下は、認知機能の低下と関連していることが研究で示されています。補聴器を使うことで、聴覚情報の入力が増え、脳が活性化され、認知機能の維持に役立つ可能性があります。

5:自信の回復

聴力が改善されることで、他者との交流や公共の場での活動に対する自信が回復します。これにより、積極的に社会参加する意欲が高まります。

6:生活の快適さ

テレビや電話の音量を上げずに済むため、家族や周囲の人々とのトラブルが減ります。また、音の大きさを調整するストレスも軽減されます。

 

どの程度の聴力になったら使用すべきかは、その人の生活によって違いがあります。自分自身や家族の判断だけで、補聴器が必要か、効果があるかを正しく見極めることはできません。

聴力検査の結果と、生活環境環境、普段の生活でどのような場面で困っているかなどを総合的に判断することが必要です。

補聴器は「ダサい」??今の補聴器は進化しています

補聴器をつけていることを人に知られたくない、または、ダサい、年寄りくさいと感じて、補聴器の装用を拒むケースが散見されます。

それはひょっとすると、「補聴器のイメージ」がアップデートされていないのかもしれません。

補聴器のイメージはどんなものでしょうか?ベージュ色で、耳から大きくはみ出して、結局よく聞こえないといわれている物でしょうか?

それは、ひと昔もふた昔も前の補聴器です。

最近の補聴器は進化しています。耳のあなにすっぽり隠れて外からは見えにくい極小サイズの補聴器や、イヤフォンと見間違えるようなオシャレでスタイリッシュな補聴器など、選択肢も豊富です。

聞こえ方も格段に良くなりました。様々な機能が搭載され、どのような場面でも聞き取りやすくなっています。Bluetooth搭載で、スマートフォンと連動できるものも多くあります。

ぜひ一度ご家族と一緒に、補聴器販売店で補聴器の現物を見てみてください。「こんなに小さいの?」「こんなにカッコイイの??」と、きっと驚くでしょう。

最新の補聴器については、こちらでも詳しくご紹介しています。

補聴器は家族のサポートでもっと上手く使いこなせる

補聴器を使い始める前、難聴者にとって世界はとても静かなところでした。そこに補聴器で音を増幅するので、うるさく感じてしまうこともあります。ただし、これは補聴器が無駄に音を大きくしているのではなく、本来聞くべき大きさの音を聞かせているだけなのです。

「補聴器の音に慣れる」ためには、しばらくの期間が必要です。36ヶ月と言われていますが、人によって違いがあります。トレーニング期間だと思って、あきらめずに補聴器を毎日使い続ける必要があります。

この期間、家族が本人に寄り添ってあげてください。

  • 毎日補聴器を使うように促す

  • 様々な場所に行って、補聴器を使って音を聞いてみる

  • 本人の聞こえ方が、補聴器未使用時とどのように違っているかを伝える

  • 使い方が分からなければサポートする

  • 補聴器販売店に一緒に行き、一緒に説明を聞く

  • 大きな声でしゃべらないように気を付ける(これまでと同じ音量では、本人にはうるさすぎます)

  • 会話を始める前に少し注意を促したり、会話の内容が理解できているか確認しながら話す

 

6.家族が難聴:心がけるべきコミュニケーションのポイント

ゆっくりはっきりした音声で、言葉のまとまりで区切って話すこと

早口にならないように、ゆっくり、ゆったりとした口調で話しましょう。また、言葉を少しずつ区切りながらの方が理解しやすいものです。ですが、一音ずつ区切るとかえってわかりにくくなるので、言葉のまとまりで区切って話しましょう。

いきなり話始めるよりも、注意を引くための言葉をまず発して、あらかじめ会話が始まることを認識させると良いでしょう。

例:「ねえねえ、今日はね、お昼ご飯を食べたら、一緒にお出かけして、駅前のね、新しいお店に、行ってみましょう。」

正面から話しかけるよう心がける

正面以外の場所から話しかけると、どの方向から声が聞こえているのかわからず、自分に話しかけられていることがわからない場合があります。

また、正面から口元を見せて話すことで、口の動きの視覚情報が聴覚情報を補ってくれます。

身振り手振りを交えて話すこと

軽いジェスチャーを交えながら話すと、会話の内容が理解しやすくなることもあります

必要以上に大声で話さない

声が大きすぎると音がくぐもってしまい、何を言っているのか余計聞き取りにくくなります。

強く言い聞かせるような話し方もNGです。責められているように感じて萎縮してしまいがちです。

細かな間違いの指摘は控える

加齢性難聴の方と話す際、明らかな誤りがあったとしても、頻繁に指摘するのは止めましょう。

何度も指摘することは自尊心を傷つけられてしまい、自分の殻に閉じこもってしまうことになりかねません。

聞こえの悪い高齢者は、聞き間違いや勘違い、思い込みが多いものです。

間違っていても特に大きな問題に発展しないようであれば、毎回指摘することは控えた方がよいでしょう。

イライラしたら会話を一旦中断

加齢性難聴の方と会話する際、イライラしながら話すのは禁物です。つられて相手も感情的になってしまい、冷静な会話ができなくなってしまいます。

自分がイライラしていることに気づいたら、数秒でも良いので一度会話を止めてみて下さい。

特にイライラが度を越して怒鳴りそうになってしまったら、自然な形で会話を中断しましょう。

例えばトイレに立ったり、水を飲んだり、深呼吸をしてみたり、などです。

 

7.まとめ

家族の聞こえが悪くなっている…話しかけても反応が無い。家族が難聴になってしまったかもしれない、不安な気持ちになることでしょう。

ですが、一番不安に感じているのは本人かもしれません。

家族としていつもそばにいるからこそ、難聴者の不安な気持ちに応えていきましょう。

以下のような4つの難聴の兆候が無いか、チェックしてみよう

  • テレビの音量が大きくなっている
  • 聞き間違いが多い
  • 聞こえているふりをする
  • 聞き返すことが頻繁になった

難聴の疑いがある場合、家族と一緒にまず耳鼻科に行こう

まずは耳鼻科に行って、聴力がどの程度なのか、補聴器が必要なのかを確認しましょう。

耳鼻科で補聴器が必要と診断されたら、補聴器販売店に一緒に行って、話を聞いてみてください。補聴器は加齢性難聴の助けになる、便利な管理医療機器です。

補聴器を使うとなったら、一緒に使いこなしていく気持ちになって家族を応援していきましょう。

時間は必要ですが、補聴器を調整しながらトレーニングを重ねることで、元の状態に近い聞こえを得ることが可能です。

本人の気持ちに寄り添うことが一番大切

本人がどう感じているのかを考え、気持ちに寄り添って行動しましょう。

耳鼻科に行く、補聴器販売店に行くときは、一緒に行って情報を共有することをお勧めします。z補聴器を使うサポートを積極的に行うことで、本人が補聴器により早く慣れることができるでしょう。

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