
最近、身の回りのものがどんどん「充電式」に変わっていますね。ワイヤレスマウスやゲーム機のコントローラー、ミニ扇風機など…。
多くのものが電源コード不要で使えるようになり、乾電池を使う機会は昔に比べてぐっと減りました。
実は、補聴器も同じ流れにあって、充電式の補聴器が増えています。
特に2020年以降、各メーカーが充電式補聴器のラインナップを拡充しています。
選択肢が増えた一方で、「どんなものを選べばいいの?」「電池式との違いは?」と悩む人も多いのではないでしょうか。
「充電式補聴器って便利なの?」「メリットは?デメリットは?」「結局、どっちを選ぶべき?」そんな疑問をお持ちの人へ!
この記事では、充電式と電池式補聴器の違い、充電式補聴器のメリット・デメリット、費用相場やおすすめのタイプまで詳しく解説します。
目次
1 充電式補聴器とは
「充電式補聴器」とは、具体的にどういう補聴器なのでしょうか?
簡単に説明すると、充電池を内蔵していて、電池を出し入れする必要が無く、専用の充電器に入れて充電する補聴器のことです。
ここ数年、多くのメーカーで「新製品は充電式の補聴器」という傾向が続いています。それだけ多くの人に受け入れられているという事ですね。
充電型補聴器の大きな特長:
リチウムイオン電池を搭載
多くの充電式補聴器は、寿命が長いリチウムイオン電池を採用しています。この充電池はスマートフォンなど、私たちの身の回りの多くのデバイスにも使われているものです。
この電池の特長は、小さく、1回のフル充電で長時間使用できる、というもの。補聴器の場合、約4時間の充電で20時間以上の使用が可能な器種が多いです。
さらに、多くの器種が「30分程度の急速充電」機能を持っています。充電を忘れてしまったときでも、少しの時間充電すれば一定時間使うことができます。
様々な形状の補聴器がある
充電式補聴器にはさまざまな形状のものがありますが、特に多いのは「耳にかけるタイプ」の耳かけ型やRIC型です。
最近は耳あな型の充電式補聴器も増えてきています。一人ひとりの耳の形に合わせて作る「オーダーメイド」タイプも、「既製」タイプも発売されており、選択肢が広がっています。
補聴器の種類について詳しく知りたい方は、ぜひこちらもご確認ください。
【自分に合った補聴器を見つけられる!主な4種類とその特徴を解説】
充電器にも様々な種類が
- バッテリー内蔵型の充電器
充電器にもバッテリーが内蔵されているタイプで、持ち歩くことを前提とした、コンパクトなタイプが多くあります。
事前に充電器を充電器を充電しておけば、充電器を電源コードに繋がなくても補聴器を充電できます。
出張などの移動が多い方や、旅行が好きな方におすすめのタイプです。
- 据え置き型の充電器
リビングや寝室に設置しておき、帰宅後や就寝前に補聴器を充電器に入れる習慣をつけやすいタイプです。
持ち歩くことを前提としていないので、蓄電機能は搭載されていません。
充電だけではなく、同時に「乾燥」と「除菌」できる充電器もあります。
2 充電式補聴器と電池式補聴器の違い
補聴器を給電方式で分けると、「充電式」と「電池式」の2種類があります。
それぞれの違いを具体的に見ていきましょう!
電源の違い
充電式:充電池が補聴器内部に組み込まれている。補聴器を専用の充電器に入れて充電する。充電池が劣化したら交換可能な器種も。
電池:空気電池(ボタン電池)を使用する。毎日電池を補聴器に出し入れする。電池が切れたら、新しいものに交換して使用する。
取り扱い方法の違い
充電式:補聴器を使う時に充電器から取り出し(自動的に電源オン)、使い終わったら充電器に入れる(自動的に電源オフ、充電開始)。基本的に毎日充電する。
電池式:補聴器を使う時に電池を入れ(電源オン)、使用しない時には電池を取り出す(電源オフ)。電池が切れたら、電池を交換する。
※器種によって取り扱い方法は異なります。
使用時間の違い
充電式:1回のフル充電で 1日~数日間使用可能。基本的に毎日充電する。
電池式:1粒の電池で数日~数週間使用可能。電池が切れたら新しいものに交換する。
補聴器の設計の違い
充電式:電池を入れる開口部が無い。 防水性や耐久性が高い器種が多い。
電池式:電池を入れる部分が開く。開くための部分が少し出っ張る。
3 充電式補聴器の特徴ごとのメリット・デメリット
充電式補聴器には多くの良い点があります。同時に、デメリットとも言える点もあるので、知っておく必要があります。
3.1 充電式補聴器のメリット
A. 取り扱いが簡単
充電式補聴器は、毎日の電池の出し入れの手間がないため、毎日の取り扱い方がとても楽です。これは、充電式補聴器の最大のメリットです。
充電器から出してすぐに耳につけるだけ、耳から外したらポンと充電器に入れればOK。
指先の細かな作業が苦手な方でも、楽に使いこなせます。
B. 電池切れの心配がない
電池式の場合、電池残量が無くなると、日中いきなり補聴器が使えなくなることがあります。
ですが充電式は、夜の間に満充電にしておけば、一日中電池切れの心配なく使うことができます。
(ストリーミングなど特別な操作が長時間続くとバッテリーが早くなくなることがあります)
C. 電池購入の必要がなく、経済的で環境に優しい
充電式補聴器は、定期的に空気電池を購入する必要がないため、電池代がかからず、ランニングコストを抑えられます。
また、使い捨て電池を使用しませんので、環境にやさしいのも特徴です。
さらに、リチウムイオン充電池には重金属が使用されていないことから、環境負荷が低いとされています。
補聴器の平均使用期間(約5.5年)で必要な電池の回数は600回以上と考えられると、充電式補聴器は環境負荷の軽減に貢献していると言われています*。
*2022年7月シグニア調べ、補聴器装用者の平均的な利用状況(両耳装用、使用時間12時間日,使用年数5.5年)で算出。
D. いつでも、どこでも、充電ケースで充電が可能
充電池内蔵型の充電器(ポータブル充電器、ポケット型充電器、とも)を使用している場合、充電器に入れるだけで補聴器を充電することができます。
充電用コードが必要ないので、外出先や旅行先にも気軽に持っていくことができ、どこでも充電することができます。
3.2 充電式補聴器のデメリット
A. 充電を忘れると使えない
充電式補聴器はスマートフォンと同じように「充電が切れると使えない」ものです。そのため、毎晩の充電が必須です。
うっかり充電を忘れると、翌日使えないので、「補聴器を外したら充電器に入れる」などの習慣化が重要です。
ただし、多くの器種には30分程度の急速充電機能が付いています。
短時間での充電で一定時間使えるため、万が一のときにも安心です。
B. 災害時の停電リスク
どんな充電式デバイスでも同じですが、万が一の停電時には、充電ができなくなるというリスクがあります。
特に災害が多い日本では、普段からの準備をしておくことをお勧めします。
ポータブル充電器が常に十分充電されているようにしたり、非常持ち出し袋にモバイルバッテリーや発電機を入れておくと良いでしょう。
C. 充電池の劣化
充電池は、使い続けるうちに少しずつ蓄電容量が減ります。長期間使用すると1回の充電で使える時間が短くなることがあります。
これはスマートフォンのバッテリーなどでも同じことです。
D. 補聴器の点検をおこたりがち
電池式の場合、電池を購入するために定期的に補聴器販売店を訪れることになります。
しかし充電式だと、補聴器販売店に行く機会が減るため、プロによる補聴器の点検やお手入れを怠りがちです。
補聴器の性能を保つためにも、定期的に専門家によるメンテナンスを受けることが大切です。
E. 選択肢がまだ少ない
充電式補聴器は、RIC型・耳かけ型のタイプが多く、耳あな型の選択肢はまだ限られている傾向があります。
使用したいタイプの補聴器に、充電式が無い場合もあります。
また、イヤモールド(オーダーメイド耳栓)を使用する場合、ポータブル充電器が利用できない場合があるなど、すべての希望に応えることができないのが現状です。
4 充電式補聴器はこんな人におすすめ
ここまで充電式補聴器についてさまざまな説明しましたが、では自分に向いているのかどうか、気になりますよね。
充電式補聴器は特にこのような人におすすめです。
・補聴器が初めての人
・よく活動する / 外出が多い人
補聴器が初めての人
補聴器デビューの人には、充電式がおすすめです。その理由は、使いやすさにあります。
電池式補聴器の場合、小さなボタン電池を毎日出し入れし、定期的に交換する必要があります。ですが補聴器用の電池はとても小さく、細かい作業が苦手な人にとっては負担になることがあります。
一方、充電式補聴器なら、夜に補聴器を充電器にいれるだけ。特別な作業も不要で、シンプルに使えます。
よく活動する / 外出が多い人
外出や旅行が多い人、アクティブに活動する人にも充電式補聴器はおすすめです。
特に、ポータブル充電器があれば、移動中や旅行先でも簡単に充電できるので、予備の電池を持って行く必要がなく、電池切れの心配をしなくてもいいので安心です。
ここまで充電式補聴器がおすすめの人を挙げましたが、補聴器の選択には複雑な要素が関係してきます。
給電方法の好みだけでなく、聞こえの状態やライフスタイルなどに合ったものを選ぶことが大切です。
必ず専門家と相談しながら、自分に最適な補聴器を選びましょう。
5 充電式補聴器の費用相場
充電式補聴器は、一般的に電池式の補聴器よりもやや高めの価格設定になっている場合が多くあります。これは、充電池の技術が組み込まれているためです。
ですが、充電式でも電池式でも同じ値段、という場合もあります。
価格はメーカーや器種によってまちまちですので、気になる補聴器がある場合は調べてみてください。
また、補聴器本体とは別に充電器を購入する必要がある場合も多く、その分の費用も考慮する必要があります。
では、充電式と電池式の補聴器、どちらがお得なのでしょうか!
充電式の場合は「補聴器本体の価格 + 充電器の価格」を初期投資として支払う必要があり、毎日充電するための「電気代」がかかります。
電池式の場合は「補聴器本体の価格」を最初に支払い、補聴器を使用し続ける限り「電池購入の費用」も必要になります。
この「充電式補聴器本体の価格 + 充電器の価格 + 電気代」と「電池式補聴器本体の価格 + 電池の価格」は、補聴器の寿命まで使った場合、だいたい同じ程度とされています。
補聴器本体の相場については、こちらの記事で詳しく解説しています:
【補聴器の相場ってどれくらい?おトクな買い方から自分に合った補聴器選びまで徹底解説!】
6 充電式補聴器のおすすめ器種
ご説明した通り、充電式補聴器には様々なタイプがあり、聞こえ方やライフスタイル、お好みに合わせて選ぶことできます。
ここでは、2025年4月時点でのおすすめの器種をいくつかご紹介します。
イヤフォン感覚で使える補聴器
「補聴器らしさ」を感じさせず、イヤフォンのように気軽に扱いたい方には、イヤフォン型補聴器がおすすめです。
デザイン性が高く、使いやすさも特徴です。
例:
シグニア補聴器 Signia Active Pro IX
目立たない補聴器を求めるなら
できるだけ目立たないものを希望する方には、コンパクトなRIC型や耳あな型の補聴器がおすすめです。
小型ながら高性能な器種が多い点が魅力です。
例:
ワイデックス補聴器 WIDEX MOMENT sRIC R D
シグニア補聴器 Silk Charge&Go IX
デザイン性を重視する人へ
スタイリッシュなデザインを優先したい人には、スリムで洗練されたSLIM RIC型の補聴器がおすすめです。
従来の耳かけ型補聴器とは異なるスリムなボディで、アクセサリー感覚でも楽しめます。
例:
ワイデックス補聴器 WIDEX SmartRIC R D
シグニア補聴器 Styletto IX
ただし、補聴器はデザインや好みだけで決めるのではなく、専門家と相談しながら、自分の聴力のレベルやニーズに合ったものを選ぶことが大切です。
7 よくある質問(Q&A)
Q1:充電式補聴器と電池式補聴器、どちらが高いですか?
一般的に、充電式補聴器は電池式よりも若干高めの価格設定がされています。また、充電器が別売りとなる場合も多く、その分の追加費用も考慮する必要があります。
補聴器の相場について、詳しくはぜひこちらをご覧ください:
補聴器の相場ってどれくらい? おトクな買い方から自分に合った補聴器選びまで徹底解説!
Q2:充電式補聴器を充電しながら乾燥させる方法はありますか?
はい、充電と乾燥を同時に行う方法があります。例えば:
a) シグニア補聴器の据え置き型充電器の「ドライ&クリーン充電器」は、充電と同時に乾燥も行える機能を備えています。(利用できる器種に限りがあります)
b) シグニア補聴器とワイデックス補聴器の「ドライキャップ UV2.1」は、充電器の上からかぶせて乾燥・除菌ができます。
Q3:海外に行く場合、充電器を問題なく使用できますか?
多くの充電器は、様々な国で使用できるように作られています。事前に現地の電圧やコンセントの形を確認し、充電器の仕様に合っているかを確認しておいてください。
また、飛行機に搭乗する時も補聴器や充電器は持ち込めます。
詳しくは:補聴器をつけて飛行機に乗れる?保安ゲートは?補聴器と旅するコツとは
Q4:充電器の爆発の危険性はありますか?
充電式補聴器の充電池は少量であるため、爆発のリスクは非常に低いと言えます。ですが、取り扱い説明書に従って正しく使用・保管することが重要です。
Q5:充電池はどのくらい使えるのですか?
補聴器の充電池の寿命はおおよそ1000回から1500回程度と言われています。その他の家電製品と同様に、充電回数を重ねるごとにバッテリーの容量が少しずつ減少していきます。
まとめ
充電式補聴器について詳しく説明しましたが、いかがでしたか?
充電式補聴器と電池式補聴器にはそれぞれに特徴があります。情報をまとめると、次のようになります。
充電式補聴器のメリットは
- 電池交換の手間が無く、毎日の管理が簡単
- 電池購入不要、経済的で環境にやさしい
- 充電ケースで充電可能(器種による)
充電式補聴器のデメリットは
- 充電を忘れると使えない
- 災害時のリスク
- 充電池の劣化
- 補聴器点検をおこたりがち
- 選択肢がまだ少ない
充電式補聴器がおすすめな人
- 補聴器を初めて使う人
- よく活動する人、外出が多い人
費用相場は
- 補聴器の価格は電池式より高い場合がある
- 充電式も電池式も、全体の費用はあまり変わらない
充電式補聴器が気になりましたら、ぜひ補聴器のお店で相談してみてください。
自分の生活スタイルをお店の人に伝え、聴力をチェックし、専門家と相談しながらあなたに最適な補聴器を選んでください。