補聴器の「自然な音」とは?違和感のない聞こえを目指して

緑豊かな公園を散歩する祖父母と孫

補聴器の音が「不自然に感じる」、「なぜか分からないけど変な感じがする」という声があります。

これには、補聴器特有の課題や、人間が音を処理する複雑な過程が関わっています。

様々な進化を遂げた最近の補聴器は、不自然さがかなり軽減され、「自然な音」になっています。

「不自然な音」「自然な音」とはそもそも何でしょうか?どうしてそう感じるのでしょうか?

1 補聴器の音が「不自然」と感じる

補聴器を使い始めた方から「補聴器からの音が不自然に聞こえる」という声を耳にすることがあります。
特に、アナログ補聴器からデジタル補聴器へと移行した10年ほど前には、こうした違和感を訴える方が多くいらっしゃいました。

しかし近年は、各補聴器メーカーが「自然な音」にこだわり、技術を日々進化させているため、不自然さを感じるケースは減少しています。

 

2 「自然な音」とは何か?

メガネをかけたとき、裸眼で見た景色と大きく違うと感じることはほとんどありません。

しかし、補聴器を通して聞く音は、なにも装用していない健康な耳で聞く音とまったく同じにはなりません。

なぜなら、補聴器は一度音を「デジタル処理」してから耳へ届けているからです。

補聴器が音をどのような過程で処理しているかを説明する図

この「デジタル処理」によって、時に音が機械的に感じられたり、人の声だけが強調されすぎたり、逆に雑音が気になったりすることがあります。

つまり、補聴器の音が「不自然」と感じられるのは、音を処理する方法や技術が大きく関係しているのです。

 

3 なぜ「自然な音」が大切なのか

私たちが音を「聞く」とき、実際に音を認識しているのは耳ではなく「脳」です。

耳が捉えた音は電気信号となり、脳で「必要な音」と「不要な音」を選別し、意味や感情まで瞬時に判断しています。

下記の絵のようなことを、私たちは無意識のうちに、瞬時に行っているのです。
これって、すごいことだと思いませんか??

様々な音の中から言葉を聞き取り、そこに含まれる情報を理解して行動を起こす様子

このような音の処理は、音が自然に聞こえるからこそ、瞬時に行うことができます。

もし補聴器から聞こえる音が不自然だと、脳は「これは聞き覚えがないけど何の音だろう?」「あの人の声にいているけど少し違って聞こえるな」などと、普段より多くの情報処理をしなければなりません。

その結果、聞き取りに余計な集中力が必要となり、疲れやストレスを感じやすくなります。

音の聞こえ方と疲れの因果関係

 

この状態が続くと、「補聴器を使いたくない」「人と会話したくない」という判断になってしまうこともあります。

生活に必要な音が充分に聞こえない状態が続くと、会話や外出が億劫になり、社会的なつながりが減ることで「認知症やうつのリスクが高まる」ことも指摘されています。

難聴と認知症のつながりを解説した図

 

だからこそ、「自然な音」で聞こえることは、健康的な生活を送る上でとても重要なのです。

4 補聴器の「自然な音」を実現する4つのポイント

 補聴器の音が「自然な音」だと感じるためには、次の4つのポイントが大切です。

明瞭さ:必要な音をクリアに届ける

人が一番聞きたいと思う音は、多くの場合「人の声」です。この大切な人の声を歪みなく届け、同時に内容が聞き取りやすいように不要な雑音などを抑えます。
これにより、周囲が騒がしくても聞きたい音に集中しやすくなります。

バランス:声と環境音の自然な調和

会話と周囲の環境音をバランスよく調和させることが大切です。
人の声だけを際立たせるのではなく、レストランの活気や街中のざわめきまで自然に聞こえることで、より豊かでリアルな聞こえが実現します。
これが「自然な音」につながります。

タイミング:音の遅延や反響を最小限に

補聴器は音を一度デジタル処理するため、生音に比べわずかな遅延が生じます。そのため、直接耳に入る音(原音)と、補聴器からのわずかに遅れた音が混じりあって、聞こえ方の違和感や補聴器特有の人工的な機械音を生み出していました。
最近の補聴器はこの遅延を極力抑え、より自然な聞こえを実現しています。

快適性:耳にやさしい最適な音量調整

補聴器は、すべての音を一律に大きくするわけではなく、その人に合った最適な音量バランスを保つように設計されています。
また、大きな音は耳障りにならない程度に大きく、小さな音も聞き逃さないように、環境に合わせて補聴器が調節することで、より自然で快適な聞こえに近づきます。

 

この4つのポイントの何に重きを置くか、またどのような技術で達成するかで、補聴器の音は大きく変わってきます。

ですから、同じ「自然な音」でも、補聴器ブランドによって少しずつ音質が違うのです。

補聴器ブランドごとの音の作り方のこだわり

5 補聴器選びで大切なこと

「自然な音」の感じ方は人それぞれ異なります。生活環境や仕事、趣味、よく行く場所によっても、心地よい音の基準は変わります。

そのため、補聴器選びでは次のポイントが大切です。

 

信頼できる補聴器販売店を選ぶ
補聴器販売員に普段の生活や困っていることをしっかり伝える

経験豊富な補聴器販売員に、あなたのことをしっかり伝えることで、あなたに適した補聴器を紹介してもらえるでしょう。

複数のブランドやクラスを試聴する

ブランドごとに補聴器の音は大きく違います。ぜひ複数のブランドを試してみてください。
また、同じブランドでも価格帯(クラス)によって音が違うので、複数のクラスを聞き比べてください。

購入前にレンタルして、実際の生活で試す

購入前に、数日~数週間補聴器を貸し出してくれる店舗が多くあります。ぜひこのサービスを利用して普段の生活でも試してみてください。

最初に違和感があっても、しばらく使い続ける

補聴器を使い始めると、これまで聞こえなかった音が聞こえて脳がびっくりしてしまいます。
しばらくすると慣れることが多いので、まずは使ってみてください

できるだけ両耳に補聴器をつける

両方の耳から音が入ってくることで、より自然で立体的な聞こえ方になり、脳の処理も楽になります。

 

補聴器を選ぶ時は、補聴器販売店で、補聴器のプロと一緒に、あなたにとって一番自然に聞こえる補聴器を探しましょう。

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