テレビの通販番組や、新聞広告、オンライン通販などで「集音器」という商品を見たことはないでしょうか?商品の見た目や機能を見ると「補聴器」と似通っていて何が違うのだろうと疑問に思われるかもしれません。実際に補聴器メーカーが行った調査では、74.2%の方が違いを知らないと答えています。
実は補聴器と集音器は似て非なるものなのです。この記事は、もしあなたが「聞こえの悩みを改善したい」と考えているとして、補聴器や集音器を検討しているのであれば、是非知っておいていただきたい内容です。
補聴器と集音器の違いを比較するだけではなく、それぞれおすすめの方、購入時のポイントなどもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
1. 補聴器と集音器の違いを徹底比較
補聴器と集音器とはそれぞれどのような製品なのでしょうか?ここでは両者の違いを徹底比較します。
補聴器 | 集音器 | |
---|---|---|
製品区分 | 医療機器 | 家電・オーディオ機器 |
目的 | 難聴者の聞こえを補助する | 一般的な音の聞き取りを補助する |
機能 |
音の増幅機能 |
基本的に音の増幅機能のみ |
使用シーン |
長期的、様々シーンでの |
短期的、静かな場所などの 限定的使用を想定 |
音質調整 | 使用者の聴力に合わせて 音質調整が可能* |
音質調整は不可能 |
音量調節 | 可能 | 可能 |
価格 | 5万円~50万円 | 数千円~3万円 |
購入方法 | 補聴器販売店 | 通販・家電量販店 |
アフターケア | 補聴器販売店で 専門スタッフがアフターケア |
セルフケア |
助成制度 | 障害者総合支援 各自治体購入助成制度 医療費控除 |
なし |
*一部通販等で販売している補聴器は除く
※この表に当てはまらない場合もあります
1-1 補聴器は「医療機器」、集音器は「家電、オーディオ機器」
補聴器は厚生労働省から「管理医療機器クラスⅡ」に指定されている医療機器です。
そのため、補聴器メーカーは補聴器を製造・販売する際に、厚生労働省が定めた効果や安全性などの基準をクリアする必要があります。また、お店が販売するときも、届け出が必要になります。
こうした基準が担保となり、聞こえの問題を改善する「効果・効能」がある機器として、信頼性を得ています。
一方で集音器は、家電・オーディオ機器となります。最近では、補聴器に近い機能を持つものも出てきていますが、難聴者向けに開発されたものではありません。基準が定められていないため、中には必要以上に大きな音が出てしまう製品もあります。耳を傷めてしまう可能性がありますので注意が必要です。
1-2 補聴器は難聴者の聞こえを補助、集音器は一般的な聞き取りを補助
補聴器は難聴者のために開発されており、難聴者をサポートするための機能が搭載されています。
一方で集音器は難聴者向けの専門機器ではなく、「特定の状況や軽度な音の聞き取りづらさを補助する装置」として、日常生活や趣味、特殊用途で幅広く活用されることを目的として開発されています。
1-3 補聴器は多機能、集音器は基本的に音の増幅機能のみ
上記で触れたとおり、集音器の目的は音を大きくすることあります。そのため、基本的には音の増幅機能のみが搭載されています。
補聴器は、難聴者の聞こえの補助が目的です。音の増幅機能はもちろん、雑音抑制機能、ハウリング抑制機能、強大音抑制機能などが基本性能として搭載されています。
1-4 補聴器は様々なシーンでの使用、集音器は限定的なシーンでの使用
補聴器は価格にもよりますが、自宅だけではなく、外出先、職場、趣味の場などで使用ができるように多くの機能を搭載しています。そのため、様々な場所で長期的に使用ができるよう想定されて開発されています。
集音器は、全体的に音を大きくするため騒がしい場所には不向きです。使用シーンが静かな環境に限定されます。仮に難聴者が使用する場合は、自宅でテレビを見る、家族と会話をするなどに限定されるでしょう。
1-5 補聴器は個人の聴力に合わせて調整が可能
補聴器と集音器の代表的な違いが、音質調整できるかどうかです。
難聴者のために開発された補聴器は、個人の聴力に合わせることが可能です。聴力は個人により千差万別です。例えば加齢による難聴の場合は、一般的に高い音(高周波数の音)が聞き取りづらくなります。つまり、低い音は増幅せず、高い音を増幅する必要があります。
補聴器はその調整が可能ですが、集音器は低い音も高い音も一様に増幅することが多く、騒がしい場所などでは逆に聞こえづらくなる可能性もあります。
1-6 音量調節はどちらも可能
一般的に音量調節については、補聴器も集音器もどちらも可能です。ここで言う音量調節とは、先に説明した音質とは違い「全体的なボリュームの上げ下げ」を指します。
1-7 補聴器は5万円程度から、集音器は高くても3万円程度
補聴器の価格はお求めやすい製品でも5万円からと集音器と比較すると高額です。集音器は1~3万円程度ですので手軽に購入することができます。
価格の差は、「高機能であること」「販売店でのアフターケア料金も含むこと」などが挙げられます。
補聴器の価格の理由は下記で詳しく知ることができます。
1-8 補聴器は対面で購入、集音器は通販で購入が一般的
補聴器は、基本的に補聴器販売店の専門スタッフから対面で購入します。理由は、個人の聞こえの状態や悩みを確認したうえで、聴力測定、音質調整などがセットになっているからです。
集音器はこの部分が必要ないため、通販で購入する方が多いようです。手軽に購入できる点が集音器の特徴です。
1-9 補聴器はアフターケアがセット、集音器はセルフケア
補聴器は使いこなすまでに慣れが必要です。慣れるに従い、補聴器の音を徐々に大きくしていくことが一般的です。そのため、購入後定期的に補聴器販売店に通う必要があり、アフターケアが必須になります。
逆に集音器はこの調整が出来ないため、アフターケアの必要がありません。購入後は全てご自身でのセルフケアのみになります。
1-10 補聴器は助成制度がある
補聴器は、「障害者総合支援法」「自治体の購入補助制度」「医療費控除」などを受けることが可能です。特に近年は自治体が購入補助制度を設けるケースが増えてきています。
集音器には助成制度はなく、全額実費で購入になります。
2 こんな人には補聴器がおすすめ
2-1 難聴の人
補聴器は難聴者のための医療機器です。聴力の程度に限らず、難聴がある場合は補聴器をおすすめします。耳鼻咽喉科で難聴と診断され、補聴器が役に立つとされた場合は、補聴器を検討しましょう。
2-2 日常生活で「聞こえ」が支障となっている人
補聴器には聞こえ方の悩みを解決してくれる機能が多く搭載されています。例えば自宅と外出先や仕事場では周囲の音環境が大きく変わりますが、補聴器は様々なシーンで快適に使用できるよう設計・開発されています。
日常生活で「聞こえ」が支障になっている方が長期的にしっかり対策を取りたい場合は補聴器をおすすめします。
3 こんな人には集音器がおすすめ
3-1 聞こえの軽い不便さを一時的に改善したい人
基本的に集音器は、会話を聞くために開発された機器ではないため、会話の聞き取りにはおすすめできません。ですが、例えば自宅でテレビの音量を上げずに聞きたい。静かな場所で家族との会話を楽しみたい。そういった限定された状況で一時的に聞こえの不便さを改善したい人は集音器で間に合う場合もあるかもしれません。
3-2 コストを抑えて手軽に試したい人
集音器のメリットとしてお求めやすい価格があげられます。1~3万円程度で購入できますので手軽に試すことができます。また補聴器を購入するには耳鼻科へ行き、補聴器販売店で1時間~2時間ほど時間がかかりますが、集音器は通販で購入できるためほとんど時間がかからずに購入できます。
4 購入時のポイント
4-1 補聴器と集音器の見分け方
補聴器販売店で対面で購入する場合は、まず集音器をすすめられることはありません。ですが、例えば家電量販店の店頭で購入する場合や、通販で購入する場合は、補聴器と集音器の見分けはつきづらいかもしれません。
家電量販店で購入する場合は、必ずスタッフの方にどちらに該当するのか確認をしましょう。
また、通販で購入する場合、補聴器の場合は必ず商品名に「補聴器」と記載があります。記載がないものは「集音器」と考えましょう。大手の通販サイトで「補聴器」と検索すると、「集音器」も一緒に検索結果に出てきてしまいます。混同しやすいので注意が必要です。
通販サイトで「補聴器」と検索すると多くの集音器が検索結果に表示される。
補聴器は商品名に「補聴器」の記載がある
【注意】通販で購入できる補聴器について
通販でも補聴器は販売されています。補聴器ですので医療機器ですが、下記の点が対面販売の補聴器と異なります。特徴と違いを把握して購入判断をしてください。
・装用者の聴力に補聴器の音質を合わせることができない
・購入後の調整はセルフケアになる
4-2 補聴器を購入する際の注意点
補聴器を購入する前に、まずは耳鼻科に行きお医者さんに相談してください。補聴器を使用することで聞こえの悩みが解決するのか、効果があるのか。難聴の種類や度合いによっては補聴器の効果がないこともあります。
また、補聴器販売店も慎重に選びましょう。購入後も音質の調整やアフターケアで訪問するため、通える範囲の信頼できる販売店を探してください。補聴器販売店の選び方は下記で詳しく知ることができます。
補聴器はどこで買う?自分に合う補聴器のお店がスグわかる6つのコツ!
お近くの補聴器販売店はここで検索できます。
4-3 集音器を購入する際の注意点
ここまでご説明した通り、集音器は基本的に難聴者向けではありません。そのため、聞こえの悩みを解決する目的であれば、静かな場所で短期的な使用に限って購入を検討してください。
近年では数多くの集音器が発売されています。その機能も様々のようです。良く吟味して選ぶようにしましょう。家電量販店などで購入前に試聴ができると良いですが、その場合でも静かな場所で聞かせてもらうことをおすすめします。
4-4 試してから購入を
補聴器は、購入前にしばらく試すことが基本です。補聴器販売店でレンタル可能ですのでご相談ください。店頭だけではなく、生活環境で試し、効果がありそうか、使いこなせるのかなどを試すことが重要です。
補聴器のレンタルについては下記で詳しく知ることができます。
補聴器のレンタルとは?3つのメリットと費用相場・活用方法まとめ
一方で集音器は、基本的に通販で購入することが多く、通常お試しすることはできません。
最近では下記のようなオンラインレンタル会社が通販で販売している補聴器や集音器をレンタルしています。有料にはなりますが、効果があるのか試したい場合には便利なサービスです。
まとめ
補聴器 | 集音器 | |
---|---|---|
製品区分 | 医療機器 | 家電・オーディオ機器 |
目的 | 難聴者の聞こえの補助 | 一般的な音の聞き取りを補助する |
機能 |
音の増幅機能 |
基本的に音の増幅機能のみ |
使用シーン |
長期的、様々シーンでの |
短期的、静かな場所などの 限定的使用を想定 |
音質調整 | 使用者の聴力に合わせて 音質調整が可能* |
音質調整は不可能 |
音量調節 | 可能 | 可能 |
価格 | 5万円~50万円 | 数千円~3万円 |
購入方法 | 補聴器販売店 | 通販・家電量販店 |
アフターケア | 補聴器販売店で 専門スタッフがアフターケア |
セルフケア |
助成制度 | 障害者総合支援 各自治体購入助成制度 医療費控除 |
なし |
補聴器がおすすめな人
- 難聴の人
- 日常生活で「聞こえ」が支障となっている人
集音器がおすすめな人
- 聞こえの軽い不便さを一時的に改善したい人
- コストを抑えて手軽に試したい人