目次
1 補聴器相談医ってなに?
「補聴器相談医」という言葉を聞いたことはありますか?あまり一般的ではないのですが、耳鼻咽喉科のお医者さんの中で、特別な勉強をした人が取得する資格です。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会のホームページでは、このように説明されています。
補聴器相談医は、患者が快適に補聴器を使用し、日常生活での聴力向上を実感できるようサポートします。聞こえが不自由になった人に対して、耳の状態を診察し聴力検査を行い、難聴の種類を診断し、また治せる難聴に対しては治療を行います。
補聴器相談医は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会専門医の中から、決められた講習と実習を受講したうえで認定される専門医で、6年ごとに決められた講習を受講し、資格を更新する必要があります。(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会HPより引用)
1-1 補聴器相談医って何する人?
補聴器相談医の役割
- 聴力検査と診断: 患者の聴力の問題を評価し、補聴器が適しているかどうかを判断します。
- 補聴器の選択支援: 患者のライフスタイルや聴覚ニーズに合わせた補聴器を提案します。
- 補聴器の調整とフォローアップ: 補聴器のフィッティングを行い、必要に応じて調整を行います。また、使用後のフォローアップやメンテナンスについてもアドバイスします。
- リハビリテーション: 補聴器を正しく使いこなすためのトレーニングやアドバイスを行います。
1-2 補聴器相談医と耳鼻科医の違い
補聴器相談医は耳鼻科医に含まれます。
耳鼻咽喉科医(耳鼻科医)は、難聴や中耳炎、鼻炎、のどの感染症など、耳・鼻・喉に関連する幅広い専門知識を持っていますが、補聴器相談医はさらに補聴器を必要とする患者に対し、より詳細で専門的なサポートを提供する役割を持っています。
補聴器相談医になるには、通常の耳鼻咽喉科医としての資格に加え、補聴器に関する専門的な研修を修了していることが求められます。この研修は、補聴器の適合や音響学に関する最新の知識を学び、補聴器が必要な患者に最適なサポートを提供するためのものです。
2 補聴器相談医にかかるべきタイミング・ケース
2-1 聞き取りにくい音や声が多くなってきた場合
日常会話やテレビの音、電話での会話が聞き取りにくいように感じた場合は、補聴器相談医を受診するタイミングです。 特に、周囲の騒音がある場所や複数人の会話で問題を感じる場合、難聴の進行が考えられます。
2-2 家族や周囲の人から指摘された場合
家族や友人から「声を大きくして話さないと聞こえない」と指摘されたり、「何度も聞き返された」と言われたりした場合は、早めに相談しましょう。
2-3 耳鳴りや違和感がある場合
難聴になると、同時に耳鳴りが起こることもあります。
耳鳴りが続く場合は、補聴器を使用することで症状が軽減される場合もありますので、医師の診察を受けることが適切です。
2-4 突発的に聴力が低下した場合
急に片耳または両耳の聴力が低下した場合、突発性難聴などが疑われます。
この場合は早期対応が回復の鍵となることが多いため、すぐに耳鼻科や補聴器について医師に相談することが重要です。
2-5 日常生活に支障が出始めた場合
聞き取れないことによって仕事や趣味、日常生活に支障が出始めた場合、早めに補聴器相談医に相談しましょう。
2-6 家族に難聴の人がいる場合
家族に難聴を持つ人が多い場合、遺伝による難聴のリスクが高くなります。
遺伝による難聴は先天性難聴(生まれつきの難聴)や若年性難聴が多いとされていますが、発症や進行の有無などさまざまなケースがありますので、心配であれば医師に相談してみましょう。
参考:難聴の遺伝子診断について – 独立行政法人国立病院機構 東京医療センター
これらのことに該当する場合は、補聴器相談医にかかるのがおすすめです。
3 補聴器相談医を受診するメリットは?
3-1 耳鼻科の診察に加え補聴器の相談ができる
補聴器相談医は患者さんの耳の状態を診察し聴力検査を行い、難聴の種類を診断します。
なんらかの疾患が見つかった場合は耳鼻科医としての治療を行い、治療できない難聴に対しては補聴器が必要なのかどうかを診断することができます。
3-2 正確な聴力検査と診断が受けられる
学校や会社、保健所などで実施される健康診断に含まれる聴力検査は「選別聴力検査」で、音を聞き取る能力を調べ、日常生活に支障がないかどうかを確認するためのものです。短時間で終了し、具体的な聴力レベルはわかりません。
一方補聴器相談医では、専用の検査設備のもと、より詳細な検査である「純音聴力検査」(気導聴力検査と骨導聴力検査)、さらに言葉の聞き取る力を検査する「語音聴力検査」を行います。
健康診断の聴力検査とは?異常が出た時に疑われる病気とその後の行動(きこえナビ)
3-3 信頼できる補聴器販売店を紹介してもらえる
補聴器相談医により「補聴器装用が必要」と診断された場合、「補聴器適合に関する診療情報提供書」を発行してもらうことができます。
「補聴器適合に関する診療情報提供書」は、補聴器のプロである認定補聴器技能者、認定補聴器専門店への紹介状の役割を果たしているため、受診した医師と連携している補聴器販売店を紹介してもらうこともできます。
なぜ認定補聴器技能者から補聴器を購入した方が良いのか(きこえナビ)
3-4 補聴器購入費用に対して医療費控除や補助金の助成を受けられる
2018年より補聴器購入費用が医療費控除の対象となりました。ただし、医療費控除として申告するためには、必ず「補聴器相談医を受診したうえで、認定補聴器専門店で認定補聴器技能者から補聴器を購入」が条件となります。
認定補聴器専門店や認定補聴器技能者以外から補聴器を購入した場合や、購入後に補聴器相談医を受診しても原則的に控除対象となりませんのでご注意ください。
補聴器購入者が医療費控除を受けるために(日本耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会)
4 補聴器相談医を受診するとどんな診察や検査があるの?
補聴器相談医を受診すると、通常の耳鼻科とは異なる専門的な検査・診療を受けることができます。
[一般の耳鼻科医/補聴器相談医]
- 耳の状態の診察
- 聴力検査(純音聴力検査など))
- 聞き取りの検査(語音聴力検査など)
こちらもチェック:語音明瞭度とは「言葉を聞き取る力」の指標:低下のサインと影響とは?(きこえナビ)
- 難聴の種類の診断
こちらもチェック:難聴の種類別特徴や症状。原因・治療・対策までわかりやすく解説(きこえナビ)
[補聴器相談医]
- 補聴器の必要性や適応の有無の判断
- 補聴器に関する相談・説明・試聴
- 補聴器の器種選択やフィッティング
こちらもチェック:自分に合った補聴器を見つけられる!主な4種類とその特徴を解説(きこえナビ)
- 補聴器の装用指導
5 補聴器相談医を受診した時の費用は?
補聴器相談医を受診した場合、診察や聴力検査のみであれば通常の耳鼻科医受診とあまり変わりません。、保険が適用されるため1000円~2000円程度になります。
なお、補聴器適合検査を行った場合は3割負担で3900円の費用がかかります。
6 補聴器相談医に相談しないとどうなるの?
ここまで、補聴器相談医を受診した場合のメリットを述べてきました。
では逆に補聴器相談医を受診しなかったらどうなるのでしょうか?ここでは補聴器相談医を受診しなかった場合のリスクをご紹介します。
6-1 適切な補聴器を選べないリスク
補聴器相談医は、地域の「認定補聴器専門店」「認定補聴器技能者」と連携している場合がほとんどです。「認定補聴器専門店」は補聴器に関する専門設備を備えた補聴器販売店で、補聴器に関する専門的な技能・知識を有するスペシャリストである「認定補聴器技能者」が必ず在籍しています。
認定外の店舗では、適切な補聴器の調整や保守ができない、補聴器販売スタッフの技能・知識が不足しているといったリスクが考えられます。
なぜ認定補聴器技能者から補聴器を購入した方が良いのか(きこえナビ)
6-2 補聴器のフィッティングや調整が不十分になるリスク
補聴器は、購入後に適切にフィッティング(音の調整)を行うことが非常に重要です。補聴器相談医は、紹介した患者に補聴器が適正に選択・販売されているか、正しいフィッティング・調整が行われているかをチェックしたり、場合によっては補聴器販売店へ指導を行う場合があります。
補聴器相談医の紹介なしで補聴器を購入した場合は、医師によるチェックが受けられないリスクがあります。
6-4 医療費控除が受けられなくなるリスク
3-4 でもご紹介したように、補聴器相談医を受診し「補聴器適合に関する診療情報提供書」を発行してもらったうえで補聴器購入した場合に限り、医療費控除を受けることができます。
一般の耳鼻科受診のみで補聴器購入した場合(「補聴器適合に関する診療情報提供書」を発行してもらわなかった場合)や、認定補聴器専門店や認定補聴器技能者以外から補聴器を購入した場合は医療費控除として申請できなくなります。
補聴器購入者が医療費控除を受けるために(日本耳鼻咽喉科・頭頸部外科学会)
7 補聴器相談医のいる病院はどこ?
平成22年の時点で5000名を超える補聴器相談医が認定されています。直接近くの耳鼻咽喉科医院や病院に問い合わせをするか、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科のホームページで各都道府県の補聴器相談医を検索することもできます。
Q&A
Q:補聴器相談医を受診すると必ず補聴器をつけなくてはいけないの?
A:いいえ。補聴器相談医を受診しても必ず補聴器を購入する必要はありません。
受診後、補聴器が必要かどうか、補聴器装用によりどの程度の効果が期待できるかを医師や補聴器販売店と相談することができます。
また、難聴のタイプによっては補聴器以外の治療法がある場合もあります。
A:補聴器相談医と補聴器適合判定医はそれぞれ役割や目的に違いがあります。それぞれの主な役割と業務は以下の通りです。
補聴器相談医
- 難聴の評価と補聴器装用の可否を判断します
- 主な業務:難聴の種類や程度を診断、補聴器の必要性について助言します
補聴器適合判定医
- すでに補聴器を装用している患者が補聴器を適切に使用しているか、調整が適切であるかを判断します
- 主な業務:補聴器装用後の効果・改善度を評価、補聴器の調整状態の確認します
Q:自分が通っている耳鼻科医が補聴器相談医の資格がない場合はどうしたらいいの?
A:まずはかかりつけの耳鼻科医に補聴器使用について相談し、必要に応じて補聴器相談医を紹介してもらいましょう。かかりつけ医の紹介状や聴力データ等があれば、その後の検査や診断もスムーズに進みます。
Q:補聴器相談医を受診せずに補聴器店で補聴器を購入してしまった。
A:補聴器相談医の診察を受けず、診療情報提供書がない場合は、医療費控除の対象外となる可能性が高いです。税務上、補聴器の購入が医療目的のものと証明できないためです。
Q:かかりつけの耳鼻科医が補聴器相談医ではない、もしくは補聴器相談医でも診療情報提供書を書いてくれない場合はどうしたらいいの?
A:かかりつけの耳鼻科医が補聴器相談医ではない場合は、補聴器装用の意思を伝えて補聴器相談医を紹介してもらいましょう。また、補聴器相談医でも診療情報提供書を発行してもらえない場合、医療費控除の申請に必要である旨を説明し再度発行をお願いしてみましょう。それでもダメな場合は別の補聴器相談医を受診してみましょう。その際、事前に電話で「補聴器適合に関する診療情報提供書の発行が可能か」を確認するとスムーズです。
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科のホームページで各都道府県の補聴器相談医を検索することができます。
まとめ
-
補聴器相談医は耳鼻科医の中でも、補聴器を必要とする患者に対し、より詳細で専門的なサポートを提供する役割を持っています
-
補聴器相談医に相談したほうがよいのは以下の場合です
聞き取りにくい音や声が多くなってきた場合
家族や周囲の人から指摘された場合
耳鳴りや違和感がある場合
突発的に聴力が低下した場合
日常生活に支障が出始めた場合
家族に難聴の人がいる場合 -
補聴器相談医を受診するメリットは?
耳鼻科の診察に加え補聴器の相談ができる
正確な聴力検査と診断が受けられる
信頼できる補聴器販売店を紹介してもらえる
補聴器購入費用に対して医療費控除や補助金の助成を受けられる -
補聴器相談医を受診すると、通常の耳鼻科と同様の検査や診察に加え、補聴器の必要性や適応の有無の判断、補聴器に関する相談・説明・試聴などより専門的な診療を受けることができます。
-
補聴器相談医を受診した時の費用は通常の耳鼻科医受診とあまり変わりなく、保険が適用されるため1000円~2000円程度です。
-
補聴器相談医に相談しない場合、適切な補聴器を選べない、補聴器のフィッティングや調整が不十分になるリスクに加え、補聴器を購入しても医療費控除が受けられなくなります。
-
補聴器相談医のいる病院は、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科のホームページで各都道府県の補聴器相談医を検索することができます