補聴器はいつから使い始める?聞こえづらくなったらすぐにでも!

初めて補聴器について検討しようとしたあなたは、聞こえづらさを意識して調べはじめたのではありませんか?
最近会話に対して何と言ったのか問い返す事が増えたり、テレビの音量が大きいと家族に指摘されたりしたことはありませんでしたか?

実は、聴力の衰えは30代から始まっていると言われています。

一般的には平均聴力が40㏈を超えるようでしたら補聴器の装用がお勧めされています。
40㏈の聴力というと、「通常の会話の声の大きさでも少し聞き間違いが増えてくる」というレベルです。
つまり、「聞き取りづらさを感じ始めたら、すぐに補聴器を使い始める」べきなのです。
まだ補聴器をつけるには早い、と思っているあなた、まずは耳鼻科で検査を受けてみてください。

自分ではそこまでは…と躊躇していても、既に補聴器の出番がやってきている可能性はあるのです。

 

 

1 補聴器を使い始めるべきタイミング

補聴器を使い始めるタイミングは、「聴力の低下が診断され、補聴器使用が有効だと判断された時点」です。年齢は関係ありません。「補聴器は年をとってから使うものだろう」と考えがちですが、これは誤りです。
JapanTrak2022の報告によると、多くの人が72歳頃に補聴器の必要性を感じるとされ
ています。
ですが、聴力の低下は個人差があり、若い年齢でも発生する可能性があります

1-1  結論: 年齢に関係なく、聴力が低下した時点で補聴器を使い始めよう

「○○歳くらいになったら、補聴器を使う」のではなく「聞こえづらくなったから補聴器を使う」のが正しい選択です。

1-2  理由:若くても難聴になる事はある

例えば、大きな音を聞き続ける環境にいた人は、早く難聴を発症する可能性が高まります。

典型的なのが、勤務先で大きな音を聞き続けたことによるものです。工場、工事現場、採掘現場など、大きな音がする勤務環境は多くあります。最近は耳せんやイヤマフなど、耳を保護するものを使用している場合も多いそうですが、そうでなかった人も多いでしょう。

また、電車や地下鉄での通勤中に音楽を聞いたり、音楽フェスに行くことが趣味の人(過去に趣味だった人も含め)も、早くから難聴を発症する可能性が高くなります。スピーカーで大きな音を出す、イヤフォンやヘッドフォンでボリュームを上げて音楽を聞く、などは耳を傷める原因になります。

また、これらの要因が無くても早くから難聴が始まる人もいます。

1-3  聴力低下は早期対処が重要

少しくらい聞こえづらくても、まだ補聴器は使わなくていい、対処は必要ない、と思いたくなると思いますが、実は「難聴を放置する」ことは大きな危険をはらんでいます。

難聴は、早期対処が必要。その理由は…

 

聞こえは「不可逆的」だから

多くの場合、聴力は一度低下すると元に戻りません。耳の中にある音を感じるための細胞(有毛細胞)は、一度傷つくと再生しないからです。ですから、一度聴力が落ちてしまうと、しばらくしたら元に戻るという事は無く、だんだん悪くなっていくだけです。
待っていても聴力が改善しないなら、早めに対処し、日々のQOLQuality of life、生活の質)をあげたほうが良いでしょう。

また、難聴の種類によっては、数週間のうちに治療を開始すれば改善が期待できるものもあります(突発性難聴など)。逆にいうと、数週間放置してしまうと、聞こえ方に決定的なダメ―ジを受けてしまうという事。なるべく早く、近くの耳鼻科や耳鼻咽喉科学会で紹介されている補聴器相談医が在籍している病院で聴力検査を受ける必要があります。

 

様々な危険性があるから

音が聞こえていない、という状態は、単に不便なだけではなく、危険性も多くはらんでいます。
・車や自転車の音が聞こえず、事故の危険性がある
・周囲が把握しづらくなり、転倒しやすくなる。そこから寝たきりになってしまうことも。

 

コミュニケーションが損なわれ、人間関係が疎遠になるから

音が良く聞こえないと、会話がうまくつながりません。そうすると、会話する機会が減っていき、家族や友人との関係にまで影響が及びます。だんだん疎遠になっていき、心が沈みがちになります。音が良く聞こえないと、会話がうまくつながりません。例えば複数人で会食する時、会話がよく聞き取れないような状況を想像してみてください。会話がうまく続かず、気まずい思いをして食事を終えると、次にまた会おうという意欲が失われてしまうでしょう。関係もだんだん疎遠になっていき、心が沈みがちになります。

 

認知症のリスクが高まるから

最近特に問題視されているのが、難聴と認知症との関係です。難聴の原因として特定できるものの中で、一番大きい多い割合を占めているのが難聴なのです。
難聴になっても、対処せずに放置すると、認知症になるリスクが高まります。会話がうまく成立しない経験が重なると、家族や友人とのコミュニケーションを避けようとするようになります。すると、外出や友達との交流が減り、気分がふさぎがちになり、その結果、認知機能の低下をもたらすと考えられています。
音が聞こえない、という状態を長く続けないように、補聴器などで脳に音を届けましょう。
(難聴になると必ず認知症になるわけではありません。また、補聴器をつけたからといって認知症を予防できるものではありません)

 

脳の再学習には時間がかかるから

難聴を長期間放置した後で補聴器をつけると、「音は聞こえても内容が理解できない」という事になりかねません。これには脳のメカニズムが関わってきます。
耳がとらえた音は脳に送られ、「脳で分析」されて、言葉として認識されます。聴力低下が長期間続くと、脳は「最近音をあまり聞かなくなった、もう音を分析しなくてもいいのかな」と、分析することをだんだん忘れていってしまいます。そうすると、再び補聴器等で音を脳に届けるようになっても、音を分析する能力を取り戻すまでに時間がかかります。場合によっては、元の水準に戻らないこともあります。

つまり、補聴器をつけるなどの対処が遅れると、「補聴器をつけて、会話の音は聞こえるようになったのに、言葉として聞こえてこない」という事になりかねないのです。

 

2 早期の対処がもたらす利点は?

それでは、早くから補聴器を使い始めたら、どんな利点があるのでしょうか。

 

早く補聴器に慣れることができる

早く使い始めると、それだけ補聴器に早く慣れることができます。取り扱いはもちろんですが、補聴器から聞こえてくる音に慣れて、使いこなせるようになるのも早まります。

 

「音は聞こえても内容が理解できない」を回避できる可能性が上がる

聞こえに不自由する期間を短くすると、脳が音を聞かない期間を短くできます。すると、再び音が聞こえてきたときに、脳が「音を分析すること」に再び慣れる期間が短くなります。

 

人間関係と心の健康を保てる

人生100年時代。補聴器の早期装用は、コミュニケーション不足によって人間関係が疎遠になるのを防ぎ、あなたの新しい挑戦を応援します。
また、聴覚刺激を継続させることによって、「楽しい」「うれしい」などの情動が起こるのを継続させ、脳機能を活性化できると言われています。

 

3 意外と若い人にも難聴は多い、補聴器を使っている人もいる

45歳から54歳の聴力

45歳から54歳まででは5.5%の人が聞こえが悪いと感じています。
意外なことに、すでに20人に1人は聞こえづらさを感じているのです。

 

55歳から64歳の聴力と補聴器使用者の割合

55歳~64歳の年代では、8.9%の人が聞こえにくさを感じています。
また、この年代での補聴器の使用率は6%程度です。
この年代で少し増えてきた、といったところでしょうか。

 

65歳から74歳の聴力と補聴器使用者の割合

65歳〜74歳の年代になると、14.9%の方が聞こえにくさを感じています。急に増えましたね。
補聴器の使用率も8.5%程度に上がっています。

 

75歳以上の聴力と補聴器使用者の割合

75歳以上の世代では、34.4%の人が聞こえにくさを感じています。3人に1人です。
補聴器の使用率も20%台にまで上がります。

(日本補聴器工業会JapanTrack2022より)

 

意外と若い世代も難聴の人が多く、また補聴器を使っていると思いませんか?ご自身の体感では、そこまで多くの人が補聴器を使っているとは思わないでしょうが、最近の補聴器はつけていても目立ちません。あえて耳元を指さして「補聴器を使っている」と言われないと、たいていの場合は気づけないものです。

あなたの知り合いのあの人も、実は補聴器を使っているのかもしれません。

 

4 まずは「聞こえ」のセルフチェックしよう!

では、あなたはどうなのでしょうか。自分の聞こえ方はどの程度なのか?補聴器は必要なのか?判断するのは自分では難しいものです。

まずは、下記のチェックシートで確認してみましょう。以下の項目にあてはまるものはありますか?

出典:日本補聴器工業会「きこえのチェックシート」

このチェック項目に「1つでも」チェックが付いたら、「難聴の疑いがある」ということです。

5 難聴の疑いありと出たら、まずは耳鼻科を受診しよう

このチェックシートに1つでもチェックが付いたら、または最近自分の聞こえ方の変化を自覚しているのなら、まずはとにかく早く耳鼻咽喉科を受診してください。

難聴かどうか、どのような種類の難聴なのか、聞こえ方の程度は、どのように対処・治療するか、は、すべて医師が判断します。

時には、耳垢が詰まっているせいで聞こえづらかった、なんていうこともあります。その時は耳鼻咽喉科で耳掃除してもらうだけで改善しますので、ぜひ耳鼻咽喉科に行ってください。

そして、現在の状況に補聴器が役立つと判断されたら、早めに補聴器を使い始めるようにしてください。

補聴器を購入するステップについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。

補聴器業界20年のプロ直伝:自分に合う補聴器購入の手順とポイント

 

6 まとめ

ここまでのまとめです。

  • 補聴器は、年齢に関係なく聴力が低下した時点で使い始めよう
  • 若くても難聴になる事はある
  • 聴力低下は早期対処が重要
  • 早期の対処がもたらす利点は色々ある
  • 意外と若い人にも難聴は多い、補聴器を使っている人もいる
  • まずは「聞こえ」のセルフチェックしよう!
  • 難聴の疑いありと出たらまずは耳鼻科を受診しよう

繰り返しになりますが、重要なのは、「とにかく早く対処する」という事です。聞こえ方が変わってくると「自分は老いてしまったのだろうか、でもそれを受け入れたくない」という意識がどうしても働きます。ですが、そもそも人の体は絶えず変化していくものです。子供から思春期、青年期、壮年期と、様々な変化をしてきました。ですから、今度も「自分という人間の成長のひとつ」として考えてみてはどうでしょうか。

人は、成長したらそれに合わせ、周囲の様々なものを変化させ、取り入れていくものです。洋服のサイズやデザインは頻繁に変えてきたでしょう。使う筆記用具を鉛筆からシャープペンに、ポールペンから万年筆に変えませんでしたか。新しい車や家電を生活の中に取り入れてきたでしょう。昔は使っていなかった携帯電話やスマートフォンも、新たに使い始めたのではないでしょうか。

今度は、補聴器という新しいデジタルデバイスも使い始めてみませんか。成長した今のあなたにこそ必要な物です。せっかく新しいものを取り入れるのですから、ぜひ早めに使い始めて、早めにモノにしてください。

 

 

 

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