補聴器を使い始めようと考えている人の中には、「補聴器をつけていることは周りに知られたくない」と思っている人も多いのではないでしょうか。
補聴器をつけた時の見た目にこだわりたい方は、「小型の補聴器」が良い選択肢です。見た目を気にせずに聞こえ方を改善できる、目立ちにくいデザインの小型補聴器はどんどん増えています。
この記事は、目立たない小型補聴器の種類、特徴、人気器種を紹介し、さらに一般的なサイズの補聴器と比較してのメリット・デメリットも説明します。目立たない補聴器の購入を検討している人は、是非参考にしてください。
目次
1 小型補聴器にはどんなものがあるのか
「小型の補聴器」というものは、車のように明確な定義はありませんが、その名のとおりとても小さいことが特徴です。まず補聴器はどんな見た目のものがあるのか、画像とともに紹介します。
1-1 補聴器の基本的な分類(耳あな型、耳かけ型)
いま主流の補聴器は、形状によって耳あなに挿して使う「耳あな型」と、耳にかけて使う「耳かけ型」という二つの種類に分類できます。下記の図は各種補聴器の外観と、着用した時の見た目をまとめたものです。
ご覧の通り、耳あな型補聴器の「IIC」、「CIC」と呼ばれる種類と、耳かけ型補聴器の小さい部類に属する「RIC型」は特に目立ちにくいです。
近くでじっくり観察しない限り、普段の生活の中で気づかれることも少ないのではないでしょうか。
より目立たない補聴器を選びたいのなら、この3種類が良い選択肢になるでしょう。
1-2 目立たない補聴器を選ぶなら耳あな型IIC、CICとRIC型
それでは上で紹介した三種類の補聴器について詳しく説明していきます。
■耳あな型IIC(アイアイシー、Invisible In the Canal-耳あなに隠れて見えない極小サイズ)
極小サイズで耳の奥深くに入るため、つけていることが外からほとんど見えません。徹底的にサイズにこだわる方によく選ばれる器種です。
サイズが小さい分パワーも少し弱いので、軽度~中等度難聴まで対応するものが多いです。
■耳あな型CIC(シーアイシー、Completely In the Canal-完全に耳あなに入る超小型)
IICよりは少しサイズが大きいですが、顔の横や後ろから見てもほとんど気づかれません。
小さいながら、一般的に機能はIICより多く、適用聴力もIICより広く、高度難聴まで対応できる器種が多いです。
■RIC型(アールアイシー型)
RIC型補聴器は、補聴器本体が耳の後ろに隠れて、音が出る部分だけ耳に入れるタイプの補聴器です。正面から見えるのは極細のワイヤーだけ、目立ちにくいのが特徴です。
搭載する機能が耳あな型より豊富な場合が多く、「目立たせたくないけど、機能も妥協したくない」人に最適な器種です。
2 おすすめの小型補聴器
実際販売されている小さい補聴器は、どんなものがあるのでしょうか。メーカー各社の特徴的な小型補聴器を紹介します。
■シグニア補聴器 「Insio IX IIC(インシオ アイエックス アイアイシー)」
■WIDEX補聴器 「MOMENT CIC-M」
■スターキー補聴器 「Signature CIC R」
■シグニア補聴器 「Silk Charge&Go IX」
■WIDEX補聴器 「MOMENT RIC-10」
■シグニア補聴器 「Insio IX IIC(インシオ アイエックス アイアイシー)」
Insio IX IICは耳の奥深くに収まる極小オーダーメイド補聴器、外からはほぼ見えない、シグニア史上最小の器種です。フローティング構造のマイクを採用しており、自由にマイクを配置することで極小サイズを実現しています。
徹底的にサイズにこだわりたい方におすすめです。軽度~中等度の難聴に対応しています。
●特徴1:シグニア最先端音声技術「Signia IXテクノロジー」搭載
搭載されている「ワードロックオン」機能で言葉のすみずみまで正確に再現し、騒がしい環境での会話もより明瞭に聞き取れます。
●特徴2:オーダーメイド
オーダーメイド補聴器は、その人の耳の形状に合わせて1台ずつ作っているので、販売店で専門スタッフがシリコンのような素材を耳に注入して型を取ります。出来上がった耳型は補聴器メーカーの工場へ送られ、耳型を元に技術者が補聴器をデザインし、3Dプリンターで作製したシェルに部品を組み込んでいきます。
そのため、このような特徴があります。
・耳にぴったりフィットして、外れにくい
・音漏れによるハウリング等が発生しにくい
・注文から納品まで1週間以上かかる
●特徴3:カスタマイズ可能
オーダーメイド補聴器は、いろいろなオプションをつけることができます。Insio IXの場合、使用者の名前を印字したり、左右わかりやすくするためにマークをつけたり、ずれにくくするために滑り止めをつけたりすることができます。
また、色の選択肢も多く、シェルの色が3色から選べます。左右違う色にすると見分けやすいですし、好きな色を選べば手に取るたびに気分も高揚しますね。
■WIDEX補聴器 「MOMENT CIC-M」
MOMENT CIC-M(モーメント)は、WIDEXの補聴器ラインナップの中で一番小さい電池式耳あな型補聴器です。「M」はMicroという意味で、一般的なCICタイプよりも小さくなります。
外耳道にぴったりと収まり、外から目立ちにくく、操作も簡単な補聴器を好む人におすすめです。
このモデルの適応聴力は一般的なIICよりも広く、軽度から高度の難聴に適しています。
●特徴1:「サウンドクラス」、「トゥルーアコースティクス」等の独自技術搭載で実現した自然な聞こえ
WIDEX独自の技術で、補聴器ユーザーが手動でプログラムを変更することなく、様々な異なる音環境においてより適した聞こえを提供します。また、使用者の外耳道形状の固有の音響的特性に合わせて計算して、その人に一番合う音の調整を行い、これまで以上により自然な聞こえをもたらします。
●特徴2:オーダーメイド
シグニアのInsio IX IICと同じくオーダーメイドの補聴器です。使用者の耳にぴったりフィットします。
■スターキー補聴器 「Signature CIC R」
Signature CIC R(シグネチャー)は世界初のCICサイズの充電式オーダーメイド補聴器です。電池交換不要なので、小さいものを扱うことが苦手な人におすすめの器種です。軽度~高度難聴に対応しています。
●特徴1:スターキー最新技術「Genesis AI」採用
人間の聴覚を模倣した音質を再現し、私たちが無意識に使っている”聴覚機能”を人工知能が自動調整することで聞こえをサポートしてくれます。
●特徴2:充電式
これまでの小型耳あな型補聴器はほとんどが電池式でしたが、電池が小さいので、毎日のお手入れで電池を出し入れることは負担に感じる人もいるでしょう。この器種は充電式で、フェースプレート(耳あなの外から見える部分)にゴールド色の充電端子があり、充電器の充電端子と接触させることで充電します。電池式に比べて取り扱いが大幅に簡単になりました。
●特徴3:オーダーメイド
シグニアのInsio IX IICと同じくオーダーメイドの補聴器です。カラーのバリエーションも豊富です。
■シグニア補聴器 「Silk Charge&Go IX」
Silk Charge&Go IX(シルク チャージアンドゴー)も超小型(CIC)の充電式耳あな型補聴器ですが、「Signature CIC R」と違うところは、オーダーメイドではなく「既製品」だという点です。
「購入する前に試してみたい」、「耳型を取られるのは抵抗がある」、「今すぐ購入したい」という人や、気軽に補聴器を始めたい方におすすめの器種です。軽度~中等度難聴に対応しています。
●特徴1:ワードロックオン機能搭載
この器種もシグニア最先端音声技術「Signia IXテクノロジー」を搭載しており、言葉のすみずみまで正確に再現し、騒がしい環境での会話もより明瞭に聞き取れます。
●特徴2:充電式+Qiワイヤレス充電
Silk Charge&Go IXも充電式の耳あな型補聴器ですが、特徴はQi充電規格対応・蓄電可能の「ポータブル充電ケース」がついているということです。
ポケットサイズのケースを毎日持ち歩くことができ、ケースの蓄電量で両耳4回フル充電可能です。外出先で突然電池が切れてもケースだけで充電できます。また、Qi充電規格に対応しているため、補聴器をケースに入れて丸ごと市販のQi充電パッドに置くだけで充電可能です。充電ケーブル挿し抜きがいらないため、よりスマートに扱えます。
●特徴3:既製品
Silk Charge&Go IXは、耳あな型補聴器の中ではめずらしい既製品タイプ。写真の通り、耳に入れる部分には柔らかい耳せんがついていて、それで耳あなに合わせています。既製品のメリットは:
・通気性が良く、こもりにくい
補聴器と耳せんの間に隙間があります。装用した時、空気がその隙間を通り抜けるので、通気性が抜群です。耳の中が湿りやすい人は、より通気性が良いこちらの構造の方が、こもらなくてより快適に感じるかもしれません。
・つけ心地が良い
耳せんはとても柔らかいシリコン素材ですので、耳の付け心地も軽やかです。硬い素材のオーダーメイド補聴器が苦手、圧迫感を感じやすいという人におすすめです。Silk Charge&Go IX用の耳せんは17種類もあり、「耳の形に合わない」ことも少ないでしょう。
・すぐに試せる、すぐに購入できる
既製品は、補聴器本体がすでに出来上がっているので、オーダーメイド補聴器よりも早く入手することができます。お店に在庫があるなら、その場ですぐに使い始めることもできますね。在庫が無くても、2~3日で取り寄せてくれるでしょう。
■WIDEX補聴器 「MOMENT RIC-10」
主要メーカーの中で最も小さいRIC型補聴器は、WIDEXのMOMENT RIC-10(モーメント)です。本体は小さく細く、耳の後ろに隠れて正面からほとんど見えません。
R-10は電池式補聴器ですが、小型ながら電池寿命が95時間と長めです。目立たないRIC型補聴器をお求めの方におすすめです。軽度~中度難聴に対応しています。
●特徴1:MOMENTプラットフォームによるピュアで自然な音
一般的な補聴器は、直接耳に入る音よりも、補聴器が処理した音が鼓膜に到達するのが遅いため、ふたつの音が混じりあって、人工的で機械的な響きが発生してしまいます。WIDEXの最新MOMENTプラットフォームは音声処理のパラダイムを変えることで、ピュアで自然な音を楽しむことができます。 さらに耳あな型「MOMENT CIC-M」に比べて、両耳の補聴器が連携して働き、聞こえを向上させる「インターイヤー」機能が搭載されていますので、音の方向感はよりつかみやすくなります。
●特徴2:既製品
MOMENT RIC-10はSilk Charge&Go IXと同じく、柔らかい耳せんで耳に合わせているため、下記の特徴があります:
・通気性が良く、こもりにくい
・つけ心地が良い
・すぐに試せる、すぐに購入できる
特徴3:カラーのバリエーションが豊富
MOMENT RIC-10は高級感ある13色も展開しています。目立たない色でも5色~6色から選べるので、アクセサリーのように、自分の好みに合わせて選択できます。
3 小型補聴器のメリット・デメリット
小型の補聴器は一般的なサイズの補聴器と比べてメリットとデメリットがあります。それも把握し、本当に自分に必要な機能を考慮した上で、補聴器選びすることをお勧めします。
「小さい補聴器を作ってもらったけど、機能が満足できない」というようなケースを避けたいですね。
3-1 小型補聴器のメリット
●軽量
本体が小さい分軽いので、耳につけたときのストレスが少ないです。
●メガネやマスクの邪魔になりにくい
特に耳あな型補聴器は、メガネやマスクの邪魔になりにくく、つけ外しの時に引っかかってなくすことは少なくなるでしょう。
小型のRIC型補聴器もサイズが小さいので、メガネやマスクと一緒につける時、圧迫感が少ないでしょう。
3-2 小型補聴器のデメリット
●搭載機能が比較的少ない
小型補聴器はその小ささを確保するために、他の補聴器には搭載されている部品を省いたりしています。そのため、搭載機能が少ないことが多いのです。
例えば、Bluetooth搭載の有無です。最近は多くの補聴器にBluetoothが搭載されており、スマートフォンの音を補聴器に飛ばして聞くことができます。ですが、上で紹介した器種はすべてBluetoothを搭載していません。
●適応聴力の制限
小型の補聴器は比較的パワーが弱く、軽度~中等度難聴用の器種が多いです。難聴の程度が重い場合は、パワーが足りずに使えないこともあります。
●耳あなの大きさの制限
耳あなが細い人は、小型の耳あな型補聴器を使えない場合があります。特にオーダーメイド耳あな型補聴器の場合は、耳あなが細い人は製作できない場合もあります。
ただし、既製品の補聴器は本体のサイズは統一されていて、耳せんはいろいろなサイズから選べます。オーダーメイドよりも制限が少ないので、オーダーメイドの小型補聴器を製作することが難しい場合、ぜひ既製品も検討してみてください。
●小さい分、扱うにはコツが必要
小型の補聴器は、思った以上に小さくなります。その小ささゆえに、補聴器を指先でつまんで耳に出し入れするのが大変に感じる人も多くいます。
さらに電池式の場合、毎朝毎晩電池を出し入れする必要がありますが、小型補聴器に使用するのは、補聴器用電池の中で一番小さいもの(10A電池)です。ミントタブレットほどの大きさの電池を取り扱うのは、とても神経を使います。
充電式の場合、電池の出し入れは不要ですが、やはり小さい本体をつまんで耳につける必要があります。
4 まとめ
●より目立たない補聴器、おすすめの形は耳あな型IIC、CICとRIC型
●小型補聴器のおすすめ5器種
■シグニア補聴器 「Insio IX IIC」
■WIDEX補聴器 「MOMENT CIC-M」
■スターキー補聴器 「Signature CIC R」
■シグニア補聴器 「Silk Charge&Go IX」
■WIDEX補聴器 「MOMENT RIC-10」
●小型補聴器のメリット
①軽量
②メガネやマスクの邪魔になりにくい
●小型補聴器のデメリット
①搭載機能が比較的少ない
②適応聴力の制限
③耳あなの大きさの制限
④小さい分、扱うにはコツが必要
いろいろな目立たない補聴器を紹介してきましたが、初めて補聴器を買う方はどれを選べばいいか、迷ってしまうこともあるかと思います。買い替えの方も最新の補聴器機能を知った上で、より自分のニーズに合った補聴器を選ぶのが理想的ですよね。
補聴器は一人ひとりの耳の形・聴力・悩み・ライフスタイルに合わせて、その人に一番合うものを選ぶことが重要ですので、ぜひ近くの補聴器販売店まで足を運んで、専門スタッフと一緒に選んでください。