「片耳が聞こえにくい」時は必読。症状や原因、治療法をやさしく解説

「風邪をひいてから片耳がこもった感じがする」「新しい職場に移って1ヶ月。2~3日前から、急に片耳が聞こえにくくなった」…。

片耳が聞こえにくいという状況は同じでも、それに伴う症状の有無によっては、想定される病気や原因、対処の緊急性、治療の方法などは多岐に渡ります。
場合によっては、一刻も早い対処が必要なケースも少なくありません

まずは、どの程度聞こえにくいのか、別の症状を併発しているのか、している場合はどんな症状なのかなどを正確に把握して、耳鼻科で診察を受けるなど、できるだけ早く的確な行動を取るようにしてください。

1 まずはチェック! すぐに病院にかかるべき症状と想定される病気

片耳が聞こえにくい場合、考えられる病気によって、最適な対処法や治療方法が異なります。

耳あかの詰まりや中耳炎などであれば、耳鼻科での治療で比較的簡単に改善できることがあります。
ですが、内耳や聴神経の問題(突発性難聴やメニエール病など)の場合は、早期に専門的な治療を受けることが重要です。

聴力低下を感じた場合は、できるだけ早く耳鼻科を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

以下、症状ごとに考えられる病気とリスク、対処方法を説明します。

前触れなく突然聴力が低下した
考えられる病気 詳しい症状や考えられるリスク、対処・治療方法
突発性難聴
  • 前触れなしに発症し、数時間から数日で急激に聴力が低下する
  • 発症してから48時間以内に治療を始めれば、治癒の可能性が高まる
  • 治療の開始が遅れると、聴力が戻らないことや慢性の聴力低下につながる
  • ステロイドなどの薬物治療を行う

出典:突発性難聴 | 日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会

耳鳴りやめまいをともなう
考えられる病気 詳しい症状や考えられるリスク、対処・治療方法
メニエール病
  • 耳鳴りや回転性のめまい、吐き気をもよおす場合も
  • 治療が遅れると、聴力低下が進む恐れも
  • 症状の進行を防ぐには、早期の治療が欠かせない
  • 利尿剤、抗目まい薬などで治療を行う。手術を行うケースも
聴神経腫瘍
  • 初期の症状は、耳鳴りや目まいを伴うことが多い
  • 進行すると顔面のしびれや麻痺、バランス感覚の異常を伴うこともある
  • 腫瘍が聴力だけでなく、顔面の神経やバランスに関係する神経などに影響を及ぼす可能性も
  • 早急に診断を受けて、手術や放射線治療などの治療を行う

出典:メニエル病とは? | 日本医師会

出典:東京大学医学部脳神経外科:聴神経腫瘍

耳の痛みや耳だれ(膿)、発熱をともなう 
考えられる病気 詳しい症状や考えられるリスク、対処・治療方法
急性中耳炎
  • ズキズキする耳の痛み、耳だれ、37~38℃程度の発熱、耳のつまりなど
  • 子供に多い
  • 鼻や喉の炎症が原因で中耳に膿が溜まる。風邪の後に発症することも多い
  • 悪化し、耳の中に膿がたまると、聴力が回復しにくくなる恐れも
  • 慢性化を防ぐためにも、抗生物質などでの早期の治療が必要
鼓膜の破裂
  • 強い耳の痛みがあり、出血や耳だれがある
  • 破れたままにしておくと、内耳に細菌などが入り込み感染症を引き起こす可能性も
  • 早期の聴力回復や合併症を防ぐためには、早期治療が大切
耳の外傷や打撲
  • 頭部や耳を強打した後に、急激に聴力が低下する
  • 痛みとともに、耳から血液や膿が出ることもある
  • 聴神経や内耳に損傷が及ぶ恐れがあるため、早急な治療が必要
  • 出血を伴う場合は、感染症のリスクも

    出典:急性中耳炎・慢性中耳炎 | 東京逓信病院

    出典:鼓膜穿孔(こまくせんこう)とは | 済生会

    耳のつまりや閉塞感をともなう
    考えられる病気 詳しい症状や考えられるリスク、対処・治療方法
    耳管障害
    • 耳と鼻をつなぐ耳管の機能が正常に働かなくなる
    • 耳がつまった感じがしたり、自分の声が響いて感じたりする
    • 正常に戻らないと、聴力が長期間に渡って戻らないことも
    • 無理に解消しようとすると鼓膜が破れるなどのリスクがあるので、早急に適切な処置が必要
    耳垢栓塞
    • 耳あかが溜まって固まり、耳あなを塞いでしまっている状態
    • 耳鳴りや自分の声が響いて感じるケースも
    • 耳鼻科に行って耳あかを取り除いてもらう
    • かえって奥に押し込んでしまったり、外耳炎を引き起こしたりする恐れがあるので、自分では取り除こうとしないこと

    出典:耳管開放症(じかんかいほうしょう)とは | 済生会  

    出典:耳管狭窄症(じかんきょうさくしょう)とは | 済生会

    出典:耳垢をほっておくと、認知症のリスクを高める!? | 日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会

     

    上記に挙げた症状以外にも風邪を引いた時に聞こえにくさや耳がつまった感じがするケースもあります。

    これは、鼻づまりによって耳管が塞がり、中耳の内圧が低下することで起こる現象です。
    鼻のつまりが解消されれば症状が解消することが多いのですが、症状が続く場合や、耳の痛み、耳だれなどの症状がある場合は、速やかに耳鼻科の診察を受けるようにしましょう。

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    2 片耳が聞こえにくいと、こんな問題が

    片耳が聞こえにくくなるケースでは、それ以外にも耳の痛みや耳鳴りなどを伴うことが多く、さまざまな病気の兆候である場合がほとんどです。そのため、自覚症状がある場合は、速やかに耳鼻科の診察を受けることをおすすめします。

    聞こえにくさを放置しておくと、重大な病気の恐れがあるだけでなく、聴力が低下したまま戻らなくなってしまう場合もあります。
    原因や治療のスピード・内容によって、両耳ともに聴力が低下する場合もあれば、片耳だけ低下する場合もあります。

    「片方の耳に難聴があっても、もう片方の耳の聴力に問題が無いなら、なんとかなるのでは?」と思われがちです。
    ですが、片方の耳に難聴があると、日常生活を送る上でさまざまな問題が起こってきます。

    2-1 会話の聞き取りが難しくなる

    複数の人が参加する会議や集まりでは、聞こえにくい耳の側に位置する人の声が、どうしても聞き取りにくくなります。

    また、片耳が聞こえにくくなると、音源がどこから来ているのかを判断するのが難しくなります。話をしているのが誰なのかがすぐにわからないことで、会話の流れについていけなくなってしまうこともあります。
    特に、複数の人が同時に話している場合や周囲が騒がしい場所では、片耳だけでは音源の識別が困難になるため、一層会話が聞き取りにくくなります。

    複数が参加する会話の聞き取りが難しくなる

    2-2 音がどこから来るのかがわかりにくくなる

    普段、私たちは、音がどちらの耳に早く到達するか、またどちらの耳に届く音が大きいかを基にして、音の出どころ(方向)を判断しています。
    片耳が聞こえにくくなると、このプロセスが正しく機能しなくなってしまうため、音や声がどこで発生しているのかを判断しにくくなります。

    音源の位置が特定できないと、複数人での会話についていくのが難しくなったり、車や自転車がどちらから接近しているのかがわかりにくくなったりします。

    車の接近音などに気づくことができる
    車がどちらから接近しているのかがわかりにくい

    2-3 日常生活での危険を回避しにくくなる

    車や自転車の接近音や、まわりの人の声などが聞こえにくくなると、自分の今いる環境をしっかり把握することが難しくなります。

    外出時などに、後方や横からくる音に気づきにくくなり、周囲への警戒がおろそかになると、交通事故などに遭う危険性も高まります。
    また、緊急時のサイレンやアナウンスをうっかり聞き逃してしまったり、素早い対応ができなかったりといった恐れも出てきます。

    アナウンスなどを聞き逃してしまう恐れがある

    2-4 疲労やストレスを感じやすくなる

    家族や友人と会話をしている時など、聞き逃さないことに気を取られていると、それだけで疲れてしまうようになります。

    また、聞き逃しや聞き間違いなどで会話の流れについていけなかったり、何度も聞き返して気まずさを感じてしまったりするようになると、周囲とコミュニケーションすること自体がストレスになる場合があります。

    疲れやストレスを感じやすくなってしまう

    2-5 疎外感など精神面での悪影響がある

    会話が聞き取りにくくなると、人と会うことが億劫になり、家に引きこもりがちになります。また、テレビや音楽も従来と同じように楽しめないことで、生活にハリがなくなってしまうケースもあります。

    周囲とのコミュニケーションが減ったり、趣味を楽しむ機会が少なくなってきたりすると、孤立感や疎外感が強まってきます。
    近年、難聴をきっかけにして社会からの孤立が強まり、うつや認知症につながりかねないという指摘がされています。

    認知症のリスク
    難聴を放置すると認知症のリスクが高まる恐れが…

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    3 片耳が聞こえにくくなった場合の対処方法

    片耳が聞こえにくい状態を放置しておくと、日常生活に支障をきたすばかりでなく、認知症などの深刻な問題につながる恐れがあります。

    片耳とはいえ聞こえにくい状態をそのままにしておくのはよくありません

    3-1 まずは耳鼻科に相談

    すでに説明しているように、片耳、両耳に限らず、聴力低下を感じた場合は、できるだけ早く耳鼻科を受診し、医師の診断に基づいて適切な治療を受けることが大切です。

    そのまま放置しておくと、聴力が低下したまま元に戻らなくなってしまう場合もあります。さらに、聴力の低下が何か他の重大な病気の兆候であるケースも少なくありません。

    まず、聞こえにくさを感じたら、聴力低下の他に痛みなどの自覚症状はないかをしっかり把握した上で、きるだけ速やかに耳鼻科の診察を受けるようにしてください。

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    3-2 補聴器によるサポート

    片耳が聞こえにくい場合、その原因によっては耳鼻科で治療を受けることで回復が期待できます。

    ただし、残念ながら、低下してしまった聴力が完全に元に戻らなかったり、片耳が聞こえにくいことで日常生活に支障が出てしまったりという場合には、補聴器によるサポートが効果的な場合があります。

    実際にどの程度聴力が低下しているのか、どんな場面で聞き取りにくさを感じているのか、良い耳と悪い耳の聴力はどの程度違うのか、などさまざまな要素を踏まえ、耳鼻科でアドバイスを受けた上で補聴器の装用を検討してはいかがでしょうか。

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    3-3 CROS(クロス)補聴システムによるサポート

    良い耳と悪い耳の聴力の状態によっては、CROS(クロス)補聴システムが有効なケースがあります。

    例えば、片方の耳はほとんど聞こえないが、反対の耳の聴力が正常な場合は、悪い側の耳にCROS送信器をつけて、悪い側の方からの音を拾います。
    その音の信号を良い側の耳につけた補聴器に転送することで、左右両方からの音を良い側の耳で聞く、というシステムを使って聞こえをサポートします。

    補聴器の使用が有効なのか、それともCROS補聴システムを使用した方がいいのかについては、耳鼻科の判断が必要になります。また、補聴器、CROS補聴システムともに、装用を検討する場合は、まず補聴器販売店に相談するようにしましょう。

    CROS(クロス)補聴システムを使えば、左右両方からの音を聞き取れる

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